第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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開いた口が塞がらないのは千夏も同じだった。 目を見開いて唇をワナワナ震わせ落ち着かない。 自分がお冷を差し出すと「ありがとう」と小さく言って、それを一気に飲み干した。 そして、 「さ、3か月後にオーディションがあるのね? 私はそれに本当に受かるの……!?」   ガタッ! と椅子ごと横を向き占い師に詰め寄った。 寄られた方はこういうに慣れているのか、至ってクールに打ち返す。 「ああ受かる、確実にね」 クラッ……! その一言にノックアウトを食らった千夏は、ベタベタの机の上に突っ伏した……が、カウントスリーを数える前にガバッと起きると、 「確実って……! ど、どうしよう……! …………あっ! そうだ! 占い師さん、それって何のオーディションなんですか!? ドラマ? 舞台? それとも声優? 演じられればなんだって構わなけど、出来れば内容が知りたいです!」 占い師の肩を掴んでガグガグ揺さぶりだしたんだ。 ちょ、ちょっと、千夏さん? 気持ちは分かるけど落ち着いて、こんなコトして占い師が怒りだしたら見てもらえなくなっちゃうから……と心配したが、怒るどころかゲラゲラと笑いだし、 「知りたいか? まぁ、知りたいに決まってるよねぇ。教えてやらんコトもないが……、」 悪そうなニヤケた顔で、ここで言葉を止めてしまった。 あ……きっとこれは鑑定料の事を言ってるんだ。 これ以上は有料、出すもの出さなきゃ答えない……と遠回しに言ってるのだろう。 よし、ここは1つ自分が金を払おうじゃないか。 だから千夏に続きを聞かせてやってくれ。 そのつもりで手をあげた、2人の間に割り込んでこう言ってやったんだ。 「あの、ココは自分が、」 「そうかい?」 は、早いな……”金を払うから” と続けるつもりだったのに、待ってましたと言わんばかりだ。 まぁ良い、1万か? 2万か? 3万か?  いくらだって、この場ですぐに払ってやる。 占い師はさらにニヤリと笑った後にカウンターを顎でしゃくった、……ん? カウンターがどうしたんだ? 訳が分からずポカンとしてると、占い師は自分に向かってダミ声を放ったのだが…… 「コーヒーはカウンターだよ。私は占いで忙しいんだ。だから色男、アンタがかわりに淹れてきな。あすこにサイフォンが見えるだろう? ウチのダンナ、町内会で出かけてるから淹れる人がいないんだよ。勝手に入って勝手に淹れて持ってきな。ぜんぶで3つだ。白髪の姉ちゃんと色男と、それから私の分もね。もちろんそれはアンタ達のオゴリ。当然だろう? 占い賃だよ。まさか、タダで見てもらおうなんて思ってないだろうねぇ。だとしたらとっとと帰んな!」 カチッ、スパァァァァァ……←タバコに火をつけて吸い始めた 「…………コーヒー3つ、セルフサービスで?」 ココ、喫茶店だろう? コーヒーを客に淹れさせるのか、……ん、だがしかし、そのくらいは問題ない。 それよりもなによりも、コーヒー一杯550円、……なのだが。 「なんか文句あるのかい?」 凄んでみせる占い師は、自分の顔に煙を吐きつつそう言った。 「いえ……」 口籠る自分。 「だったら早くコーヒー淹れてきな。ここまで持ってきたら占いの続きをしてやるよ。イヒヒ」 ”逆らえないだろう?” な占い師。 「ジャッキー、お願い!」 両手を合わせて頼み込む千夏。 ………………なんなんだ、この状況。 自分は占いは初めてなのだが、どこもこういう感じなのだろうか。 よく分からないがとにかく今、自分がすべき事は1つしかない。 「あ……と、それでは失礼して、自分、コーヒー3つ淹れてきます」 言い残して席を立ち、サイフォン目指してカウンターへと向かったのだ。
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