第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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「…………! ウソ……ウソみたい」 とうとう千夏が泣き出した。 嬉しそうに、でも少し戸惑いながら。 自分も嬉しかった。 千夏の努力は生半可なものではない、それをずっと見てきた。 付き合う前も付き合った後も。 その努力が認められる日が来るんだ。 愛しい女が幸せになる、運を掴む、これ以上に嬉しい事があるだろうか。 だが……この占い師、一体なにを見て占っているのだろう。 いまだ、生年月日はおろか名前すら聞いていない。 千夏の事は ”白髪の姉ちゃん”、自分の事は ”色男” だ。 解せないと言えば解せないが、不思議な事に嘘出まかせを言っているとは思えない。 それから千夏は占い師に色々な事を聞いていた。 オーディションが舞台の主役を決めるものであるとか、その舞台をきっかけに次から次へと仕事が舞い込むとか、だから今のアルバイトは早めに辞めた方が良いとか(これは占いじゃないか)。 千夏はすっかり明るい顔になっていた。 3か月後のオーディションに向け、訓練を倍にすると張り切っている。 だが、占い師の言葉には続きがあった。 それを聞いた時、千夏は、……いや、自分も言葉を失くしてしまったんだ。 「……と、これがアンタの未来なんだけど、この未来にうまく乗るには1つ条件がある。条件と言うより、障害を排除と言った方が正しいかもしれないねぇ」 「障害……? なにそれ……コワイな。それはどんな事なんですか……?」 不安を隠せない千夏……占い師は、千夏よりも自分をチラリと見て嫌なため息をついた。 「姉ちゃんが本気で大女優になりたいと願うなら、今すぐ男と別れな。ああ、そうだよ。目の前にいる色男と別れろって言ったんだ。この男がいる限り、輝く未来は逃げていく……やめときな。この男、アンタの手には負えないから、」 …………それは一体、 どういう意味なんだ……
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