第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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「どういう意味ですか、……それれはつまり、恋愛に関して整理をつけろという事ですか? だけど、私が目指しているのはアイドルじゃない。アイドルなら恋愛禁止も分かるけど、俳優ならそれほど問題にならないはず、……たぶんだけど。と、とにかく、その辺はうまくやります! だって……好きなんだもの、別れたくないよ」 千夏はガクッと肩を落として消え入るようにそう言った。 さっきまでの喜びようがウソのように沈んでる。 自分も同じだ、千夏と別れたくない。 だがもしも、自分のせいで輝く未来を潰すような事になれば……自分は一生後悔をするだろう。 カチッ、スパァァァァァ…… 涙を拭う千夏の横で、占い師は2本目のタバコに火を着けた。 その煙を上に吐き、そして言ったんだ。 「占ってくれと言ったのは白髪の姉ちゃん、アンタだよ。内容が気に入らないなら今すぐ帰んな。3か月後の試験の事、色男の事、信じようと信じまいとアンタの自由だ。さぁ! お帰りはアチラ、……と、言いたいトコなんだがね。その前に色男も占ってやるよ。コーヒーを奢ってもらってるからその分だ……と言うのは建前。この男、……面白いねぇ。実に数奇な運命を背負ってる。ここまで酷いのは久しぶりだ」 数奇な運命を背負ってる? 自分が? そりゃあまぁ、今までを思い出せば順風満帆とは言えない人生だった。 仕事柄、いつも危険と背中合わせで何度も危ない目に遭った。 親が望む道から外れて好きな事して食っている。 その事を言っているのだろうか。 だとしたら問題ない。 数奇だろうがなんだろうが、自分の人生に満足している。 多少の危険は承知の上、スタントマンは自分にとって天職だ。 「なんだい色男、随分と余裕だねぇ。占いをしにくるヤツは、良い事を言ってるうちは上機嫌だが、悪い事を言った途端に青ざめるんだ。下手をすりゃあ、文句まで言ってくる。アンタ、よっぽど自分に自信があるのか、運命に勝てると思っているのかい?」 彼女は身体の向きを変え、スパァァァァァと再び自分に向かって煙を吐いた。 「運命に勝てるかどうかは自分次第でしょう。失礼を承知で言わせてもらえば、占いは ”当たるも八卦当たらぬも八卦” だ。悪い未来を予言されても必要以上に怯える必要はない、そう思ってるだけです。自分に自信がある訳ではないですよ」 吐かれた煙を軽く避け、思った事をそのまま言った。
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