第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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「ほう、随分と言うじゃないか。だったら遠慮はいらなそうだ。あまりの未来にどこまで話して良いものかと迷ったが、視えたものすべてを話してやろう。だがその前に忠告してやる。良いかい、色男。悪い事は言わないから、今の仕事は明日にでもすぐ辞めな。でないと……取り返しのつかない事になるよ」 スパァァァァァ…… 遠慮が無いのはスモークマナーもか。 これで何度目だろう、占い師は自分に向かって煙を吐くんだ。 「取り返しがつかないとは穏やかではないな……ご忠告は感謝します。ですが、仕事を辞めるつもりはありません。仕事は自分の生きがいなんだ。なにがあろうと手放すつもりはない、」 スタント以外の選択肢は無い。 危険であろうと、自分はこの仕事を一生続ける。 いつか、最高齢スタントマンとして表彰されるのが夢なのだから。 「ふぅん、生きがいねぇ。だけどね、このまま続ければ間違いなく、アンタはその ”生きがい” に破滅させられる」 「…………含んだ言い方だ。どう破滅させられるんです? どうせならハッキリ話してくださいよ」 若干のイラつきが言葉に出てしまった。 悪い未来、勿体ぶった言い方が神経を逆なでさせる。 「…………色男、アンタモテるだろう。その目、良いねぇ。強くて真っすぐで屈しない目だ。ゾクゾクするよ、……その目がいつしか、死んだ魚の目に変わるのかと思うと……未来のアンタは今と正反対。絶望と憎悪、とてつもない劣等感から家から一歩も出れなくなる、」 ゾクリとした、……占い師のタバコの煙、占い師の低い声。 話す言葉は気分の悪いものばかり。 「…………驚いたかい? だけどぜんぶ本当の事さ。このまま仕事を続けていたら、今言った未来が待ってる。どうしてそうなるのか知りたいか? 知りたいなら教えてやろう、………………アンタはね、仕事中に事故に遭う。それがきっかけで仕事を失う、…………ああ、酷い事故だ。燃えてるのは……車、……運転してるのは色男、……火傷を負って、……それだけで済めば良いが……済まないんだよ、」 鳥肌がたった、酷い未来を語る言葉はもちろんだが……それ以上に、どこを見ているんだ……占い師は少し高い位置を見ている、……が、見ているのは壁や天井ではなさそうだ。 内容もさることながら、その行動に不気味なものを感じていると、ふと顔をさげ最後に一言。 「アンタは足を失うよ。膝から下の両方をね」 こう言って目線を外されたんだ。
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