第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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◆ 「……ジャッキー、ごめん。嫌な思いをしたよね、私が占いに行こうなんて言ったからだ」 【喫茶・かすり傷】からの帰り道。 千夏はすっかり半べそだ。 「どうして千夏があやまるの? 面白かったよ。まぁ、あの占い師はちょっと変わっていたけどね。でも、悪い人じゃなさそうだ。占い……当たると良いな。3か月後のオーディション、千夏が受かると言ってたものな」 ____試験に受かったら人生が引っくり返る、 ____誰もかれもがアンタに夢中になる、 ____アンタは未来の大女優になるんだよ、 頭の中で思い出されるあの言葉。 もしも当たれば千夏はスター。 今までの努力のすべてが報われるんだ、……と言うのに、当の千夏はちっとも嬉しくなさそうだった。 「あんなのインチキだよ! 占いなんか信じない! 私達、あの人にからかわれたの! 途中からおかしいと思ったんだ。名前も聞かない、生年月日も聞かない、顔を見て好き勝手に喋るだけ! しかも……私の事、”白髪の姉ちゃん” だって! これ白髪じゃないし、ホワイトベージュだし!」 ぷーっとほっぺを膨らまし、真っ赤になって文句を言って、そうかと思うと急に甘えて幼子みたいに「手ぇつなぐ!」と左手を差し出した。 やれやれ、一体どうした。 「えっと……千夏さん? 手はもう繋いでるじゃない。自分の左手と千夏の右手、……ほら、店を出た時からこうしてるでしょ」 言いながら、少し屈んで千夏の顔を覗き込む。 すると千夏は赤い顔はそのままに、唇を強く噛みしめ涙をボロボロ下に落としてこう言ったんだ。
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