第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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◆ AM6:47 楽しかったデートの翌日。 この日は千夏に仕事があるので自分も一緒に部屋を出た。 駅までは一緒に行こうと10分弱の道のりを、朝日を浴びつつのんびりと歩いてく。 「もぅ、ツイてないなぁ。せっかくバイトがお休みなのに、今日に限ってエキストラが入ってるんだもん、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 …………ぷっ、 ため息が異様に長くて笑ってしまった。 本人は真面目に文句を言ってるつもりらしいけど、自分の目には、文句と言うより駄々っ子に見えてしまう。 「まぁ、そう言わないで頑張っておいで。家に帰ったら昨日のアイスを食べたら良いよ」 言いながら千夏の頭を撫ぜてやる。 その頭には夏に買った野球帽、安物なのにこうしていつも被ってくれる。 「うん、そうだよね。ウチにはまだバニラのアイスが8個もあるんだもん! うぅ……行きたくないけど、それを心の支えに頑張るよ」 「あはは、アイスでそこまで頑張れるなら、これからも切らさないようにしなくちゃな。安心して、自分がまた買ってくるから」 「ほんと!? やった! 嬉しいー!」 他愛のない会話だ。 アイスにはしゃぐ千夏が愛しく、今すぐここで抱きしめたくなる……が、タイムリミットだ、駅に着いてしまった。 改札前で時間に追われて言葉を交わす、次に会うまでしばしの別れだ。 「夜に電話するよ」 「うん、絶対ね」 「撮影頑張って」 「ただのエキストラだよ」 「今はね」 「今はって……これからもそうだと思う、」 「そんな事ないさ。占いで言われたじゃないか。未来の大女優だって」 「……あの占いはインチキだよ。私、信じてないから。それに…………あっ! ゴメン、電車の時間がヤバイかも! 私もう行かなくちゃ!」 千夏は最後、”それに” となにかを言いかけて、だけどまたもやタイムリミット、電車の時間に急いで駆けて行ってしまった。 慌ただしく見送った後、自分も電車に乗ろうとしたがやっぱり止めた。 今日は仕事が無い日だし、訓練がてら走ろうと思ったからだ。 そうと決めたらどういうルートが良いだろうと考えてると…… ブブブ、 ポケットの携帯電話が細かく震え、取り出して見てみれば千夏からのメールだった。 ____電車間に合ったよ。 あのね、私ね、マネージャーからあるオーディションを受けないかって言われてるの。いつになく熱心で、どうしても受けて来いってウルサイんだ。でも……そのオーディション、気乗りしなくて受けたくないんだよね。と言うか、俳優自体もやめようか迷ってる。今行ってるバイト先で正社員にならないかって誘われてるし、普通に働くのも良いかなぁって思い始めてさ。……ねぇ、もしも私が俳優やめて会社員になったら、ジャッキーはガッカリする? でも会社員なら、仕事の時間も規則的だし毎日ご飯が作れるよ。私、ジャッキーが好きな物を毎日だって作りたい。私、ジャッキーと一緒に住みたいよ。冗談じゃなく本気でそう思ってる。だからジャッキーも考えてほしいんだ。私との未来を____
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