第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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◆ あれから結局、どこにも寄らずに自宅に戻って仮眠をとった。 ……が、仮眠のつもりだったのに、目が覚めると夕方で、窓の外は夕日が真っ赤に燃えている。 嘘だろ? もうこんな時間? 今日、なんにもしてないじゃないか。  参ったな、貴重な休みを無駄にした。 焦った自分は今からでも走りに行こうと考えて、それから、やりたい事とやるべき事を、頭の中でリストアップしたのだが…… 「いや、違う。最優先は千夏の事だ」 独り言ち、携帯電話を取り出したんだ。 目が覚めるにつれはっきりと思い出す。 朝のメールを10回は読み返してる。 ____私、ジャッキーと一緒に住みたいよ、 ____だからジャッキーも考えてほしいんだ、 ____私との未来を、 千夏は一体どういうつもりなんだろう。 自分と一緒に住みたい? 自分に考えてほしい? 千夏との未来を……? 何度読んでも千夏の気持ちが分からない。 2人で一緒にどこかに住んで、そしていつかは結婚したい、……そう言いたいのだろうか。 まるでプロポーズだ。 確かに、まったく考えていない訳ではない。 お互いに好き合ってるし、それに、千夏はこれまで冗談めかして「ジャッキーの奥さんになりたい」そう言ったのも1度や2度ではなかったからだ。 今すぐではないかもしれない。 けれど、このまま2人が続いていくなら、その先に ”結婚” があったとしてもなんらおかしくないのだ。 それでも、それでもだ。 そう考えてもやっぱり気持ちが分からない。 だっておかしいじゃないか、 ____と言うか、俳優自体もやめようか迷ってる、 ____普通に働くのも良いかなぁって思い始めてさ、 こんな事まで言い出すなんて。 千夏は芝居が大好きで、演じる事は息をするのと同じなんだと言っていた。 たとえ売れなくても、たとえまわりに笑われても、それでも、呼吸を止めたら死んでしまうから、生きてく為に私は一生演じるの、と言っていたのに。 こうもあっさり止めるなどと、言うはずが無いんだ。 …………理由は、同棲や結婚は関係ないのだろう。 思い当る事と言えば、……いつぞやの占いではないだろうか。 しかもそれは千夏の結果の方ではなくて、 ____アンタはね、仕事中に事故に遭う、 ____足を失うよ、 ____膝から下の両方をね、 おそらく自分の結果の方だ。
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