472人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
あれから結局、どこにも寄らずに自宅に戻って仮眠をとった。
……が、仮眠のつもりだったのに、目が覚めると夕方で、窓の外は夕日が真っ赤に燃えている。
嘘だろ? もうこんな時間?
今日、なんにもしてないじゃないか。
参ったな、貴重な休みを無駄にした。
焦った自分は今からでも走りに行こうと考えて、それから、やりたい事とやるべき事を、頭の中でリストアップしたのだが……
「いや、違う。最優先は千夏の事だ」
独り言ち、携帯電話を取り出したんだ。
目が覚めるにつれはっきりと思い出す。
朝のメールを10回は読み返してる。
____私、ジャッキーと一緒に住みたいよ、
____だからジャッキーも考えてほしいんだ、
____私との未来を、
千夏は一体どういうつもりなんだろう。
自分と一緒に住みたい?
自分に考えてほしい?
千夏との未来を……?
何度読んでも千夏の気持ちが分からない。
2人で一緒にどこかに住んで、そしていつかは結婚したい、……そう言いたいのだろうか。
まるでプロポーズだ。
確かに、まったく考えていない訳ではない。
お互いに好き合ってるし、それに、千夏はこれまで冗談めかして「ジャッキーの奥さんになりたい」そう言ったのも1度や2度ではなかったからだ。
今すぐではないかもしれない。
けれど、このまま2人が続いていくなら、その先に ”結婚” があったとしてもなんらおかしくないのだ。
それでも、それでもだ。
そう考えてもやっぱり気持ちが分からない。
だっておかしいじゃないか、
____と言うか、俳優自体もやめようか迷ってる、
____普通に働くのも良いかなぁって思い始めてさ、
こんな事まで言い出すなんて。
千夏は芝居が大好きで、演じる事は息をするのと同じなんだと言っていた。
たとえ売れなくても、たとえまわりに笑われても、それでも、呼吸を止めたら死んでしまうから、生きてく為に私は一生演じるの、と言っていたのに。
こうもあっさり止めるなどと、言うはずが無いんだ。
…………理由は、同棲や結婚は関係ないのだろう。
思い当る事と言えば、……いつぞやの占いではないだろうか。
しかもそれは千夏の結果の方ではなくて、
____アンタはね、仕事中に事故に遭う、
____足を失うよ、
____膝から下の両方をね、
おそらく自分の結果の方だ。
最初のコメントを投稿しよう!