第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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千夏は素直に自分にもたれ、小さく息を吐いていた。 こんな千夏は初めてだ。 本当に疲れてしまったのだろうか。 諦めて後悔しないだろうか。 千夏の頭を胸に抱き、そんな事を考えていた。 やめるのは簡単だ。 事務所に行ってその旨を伝えればいいのだから。 だが、千夏の仕事は一般事務のそれとは違う。 やめました、だけどやっぱり復帰したいです、……そう言ったとして戻れる保証はどこにもない。 入るは狭き険しき門で、俳優志願は星の数程。 一時の迷いでやめてしまえば、もう二度と俳優には戻れない。 それでもやめたいのだろうか。 だが……今の千夏は疲労が色濃く滲んでる。 細い体は折れそうで、笑顔を見せるがかすかに強張り口調もおかしい。 元気に言葉を紡いだ次には、一気に地まで落ちるんだ。 千夏は言った。 少し疲れたと、 自分と一緒にいたいのだと、 時間のすべてを自分の為に使いたいと、……自分がいれば千夏は元気になれるのか? 一緒に住むのが望みなら、その願いを叶えてやれるのは自分だけ。 「ジャッキー……変なコト言ってごめんね、でも私……」 か細い声、千夏が自分のシャツを掴んでそう言った。 細い手首、白い肌には血管が薄青色に透けている。 「……ううん、少しも変じゃないよ。疲れてしまったの? もう頑張れないくらいに? ああ……誤解しないで、無理に頑張れという意味じゃないんだ。ただ、俳優を諦めて後悔しないか心配でね。今は確かにエキストラが中心だけど、これからどうなるか分からないじゃない。そうだよ、占いでも言われt、」 「やめて……!」 話しの途中、”占い” と言いかけて、それを千夏が遮った。 通る声で、大きな声で、……こんな事も初めてだ。 千夏は自分の腕の中、上げた顔は目が赤い。 「千夏(ちな)……?」 「……ああ……ごめん、大きな声出しちゃた。……今は占いの話は関係ないから、それでつい……本当にごめん」
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