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さーてがんばるぞー! そんな勢いで腕をまくる伊藤さん。
今度は僕が恐縮しちゃう、そんなのダメですよ!
「い、伊藤さん! お気持ちは嬉しいけど……ダメです! 甘える訳にはいきませんよぉ……だって件数多いもの、軽く100件超えてるもの。読み合わせだけでも時間かかると思うし……」
「えぇ!? そんなに!? だったら尚更一緒にやった方がいいよ。でないといつまでたっても終わらないよ?」
「で、でも……悪いし……」
「悪かないよ。このまま家に帰ったら、岡村君が心配で眠れなくなっちゃう」
「え……そうなの……? 眠れなくなっちゃうの?」
「そうだよ。だから……ね! さっさとやっちゃおう! お、これがリストかな? じゃあ端から読むよー確認してー」
「あ……は、はい! もう本当にすみません! 正直助かります、めっちゃ感謝です、甘えさせていただきますぅぅ!」
「ふふふ、大袈裟だなぁ。でも、岡村君のそういう所が大好きだよ。良い子だね、ありがとね、これからも社長の事ヨロシクね。じゃあ1件目読みまーす!」
「はーい! お願いしまーす!」
男2人でキャッキャウフフと確認作業。
1人ですれば大変だけど、2人ですれば早いし楽しい。
途中で適度にお休みしながら、おしゃべりなんかもしちゃってさ、空が白む明け方頃には完璧に仕上がったんだ。
……
…………
「よし……と、これで完璧です! 1件も間違いありません! やったー! 嬉しー! これもみんな伊藤さんのおかげです! 僕1人じゃあ、出来なかったと思います。本当にありがとうございました!」
嬉しくて感謝して、ガバッと頭を深くさげると、伊藤さんは慌てふためき同じように頭をさげた。
「や、やだなぁ! 私はただリストを読んだだけ、何もしてないよ! ほ、ほらぁ、頭をあげて、でないと私もあげられないよぉ」
ハッ!
そういうものか!
「な、なんかゴメンナサイ! 気を遣わせちゃった! でもね、本当に感謝してるんです。ありがとうございます」
僕は頭をソロソロ上げて、だけど、これだけは言わせてもらいますっ! と改めてお礼を言った。
すると伊藤さんは、またもさめざめ泣き出したんだ。
「……うぅ……ありがとうか……それは私のセリフだよ。思いがけずキミに会えて、私と話をしてくれて、ちょっぴりでも役に立てたなら嬉しい……うん、すごく嬉しいよ、ありがとね、本当にありがとね」
やだ、伊藤さんこそ大袈裟。
何度もお礼を言いながら、両手のひらで一生懸命涙を拭いて、泣きながら笑ってるんだ。
そう、いつもでもいつまでも。
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