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「いや、良いんだ。今のは自分が悪かった。ごめんね」
「…………なんでジャッキーがあやまるの? ジャッキーはなにも悪くないよ。私がぐだぐだゴネてるだけ、……ああもう、こんな私ヤダな…………」
千夏は独り言ちた後、両手で涙をゴシゴシ拭いて、その手で頬をペチペチ叩き、
「……ごめん、ちょっと顔洗ってくるね」
そう言って洗面所に消えた。
……
…………
「はぁ……、」
ため息が出た。
どうするのが千夏にとって最善なのだろう。
一緒に住むのは嫌ではない……が、そこじゃないんだ。
疲れたと千夏が言うなら休ませてやりたい、そう思いかけた。
あんな千夏を初めて見たし、なんといっても愛しい女だ。
だが、さっきの反応が引っかかる。
”占い” と言っただけで大きな声をあげるなど、千夏らしくないんだよ。
「……はぁ、」
二度目のため息。
千夏は中々戻って来なく、テレビでもつけようかと膝立ちをした。
その時、千夏のバッグが視界の端に見えたんだ。
エキストラはメイクも髪も自分でするから荷物が多い。
大きなバッグはクタッと床に置かれてて、ファスナーが開いているから中身がほとんど丸見えだ。
見えたのは、化粧道具が入っているのかポーチがいくつか、あとはブラシと手鏡と、その隙間に紛れるように挟まってるのは……なんだ?
自分はそれがなんだか気になって、バッグに引き寄せられていた。
千夏はまだ戻ってこない……こんなとこを見られたら、おかしな誤解をされてしまう。
そう思うのに抗えなかった。
どうしても見なくちゃいけない、そう思えて仕方がない。
自分はバッグの横に座って手を伸ばす、挟まってるのは……本、……だろうか?
洗面所に目をやれば、ドアは開かず閉まったまま。
心の中で千夏にあやまり、思い切って本を掴んで引き出した。
手に取って中を見る…………と、そこにすべての答えがあったんだ。
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