第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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◆ ~~~それからの未来、21年後~~~ ……ん、 …………さん、 ……ジャッ……ん、 「ジャッキーさん、起きて。そろそろお昼ですよ」 声に、起こされた。 明るい陽ざし、薄目を開けると上から自分を覗き込むのは…… 「……エイミーさん、……ああ、すまない。自分は眠ってしまったのか」 ”おくりび” の若きエースがそこにいた。 「よく眠ってたからそのままにしてたけど、もうすぐお昼休みになるから、一緒にランチに行きたくて起こしちゃった。仕事中は寝ても良いけど、ゴハンはちゃんと食べないと。食は大事だからね」 そう言われて壁の時計を見てみれば、あと10分ちょっとで12時だ。 なんてこった。 月に数度の出社日なのに、仕事もしないでソファで眠りこけていた。 「あはは、確かに食事は大事だな。……ねぇ、エイミーさん。自分はいつから寝ちゃってた?」 「何時頃だったろ? 出社して、報告書を一緒に書いて終わったのが10時くらいでしょ。その後にお茶を飲んで、ジャッキーさんがソファに座って、気づいたら寝てたんだ。だから多分10時半くらいからじゃないのかな」 「そう、……けっこう寝てたな。起こしてくれたら良かったのに」 腹の上にかけられた、大きなタオルを横にどかして身体を起こす。 事務所の窓際、そこに置かれたソファに座ると気持ちが良くて、ついつい睡魔に負けるんだ。 言い訳じゃないけれど、ここでの寝落ちは自分だけじゃない。 ”おくりび” の誰もが陥る罠なのだ。 「あはは、たったの1時間半だよ。それに社長も起こすなって言ってたし。社長命令とあらば寝かしておくしかないっしょ。あ、ちなみにタオルはユリちゃんがかけてたよ。おなかを冷やしちゃダメだからって」 エイミーさんはクスクス笑ってそう言って、自分にお茶を差し出した。 ”寝起きは水分とらないと” と言いながら。 「ありがとう。キミの淹れてくれるお茶はいつも美味しいよ。……そういえば社長とユリさんは? いないようだけど、どこかに外出かい?」 「ああ、2人で駅ビルの文房具屋さんに行ったみたい。ユリちゃんがキラキラ光るインクのペンが欲しいんだって話したら、今すぐ買いに行こうって。ホント、社長ってユリちゃんに甘々だよねぇ。ふふふ、仲良きことは美しきかなだ。で、ついでにランチも食べてくるって言ってた。だから僕らも美味しいモノを食べに行こうよ!」 バッと両手を上にあげ、”ランチランチ” とはしゃぐエースは今年で31才だ。 早いもので入社してから1年強、成長が眩しいくらいに著しい。 縁とは面白いものだな、……この会社に入らなければ、エイミーさんとも出会わなかった。 繋がる縁、切れる縁、切りたくなくとも切らなければならない縁。 長く生きてると、縁も色々あるのだなと思い知る。
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