第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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「なんの撮影だろ? ドラマとか映画かな(パク! モグモグモグ)」 ランチのグリルを頬張りながら、エイミーさんは疑問を自分に投げてきた。 「さぁ、なんだろうね。でも、ドラマや映画じゃなそうだ。だって見てごらん。撮影機材が違うもの。カメラマンは1人、それもただの一眼レフ。照明機材も小規模だし、もしかしたら雑誌かなにかの撮影かもしれないね」 遠い過去のスタント時代。 あの頃見てきたドラマや映画の撮影現場とぜんぜん違う。 それを言うとエイミーさんは嬉々としながら、 「そっか、ジャッキーさんはスタントマンだったから、撮影現場に詳しいんだ!」 そう言ったけど、なにも詳しい訳じゃない。 だいぶ昔の話になるから記憶もおぼろだ。 「あぁ……それにしても綺麗な女性(ひと)だなぁ。僕、白川千夏のドラマはぜんぶ見たんだ。あの人スゴイよね。コメディからシリアスまで、どんな役でも演じちゃう。デビューからずっと第一線で活躍するのも頷けるよ。今日ココに来て良かった。まさか本物が見られるなんてチョーラッキー! あぁ……出来ればサインとかほしいなぁ、でも無理かなぁ……(モーグモーグ)」 ため息交じりに千夏を眺めるエイミーさん、なのだが……自分は今、不自然ではないだろうか。 何の気なしにランチに出かけ、そこで、思いがけず千夏の姿を目にした自分は、鼓動がうるさく鳴っている。 千夏の事はテレビやネットで、その活躍をたびたび見聞きはしてたんだ。 十代でスカウトされて芸能事務所に属した千夏。 だが、そこからの数年間はチャンスに中々恵まれなかった。 転機が訪れたのは20才(ハタチ)の時だ。 受けた舞台のオーディション、それを勝ち抜き主演となって……以来、誰もが千夏に夢中になった。 綺麗なだけじゃない、若いだけでもない。 実力があり、人気が出ても天狗にならず、下積み時代となんら変わらず努力に努力を重ねる千夏。 そんなところも人気の理由だ。 見ている者を惹き付ける、見てると応援したくなる。 あの舞台をきっかけに、それからずっとくすむ事なく第一線で活躍してる。 いつぞやの占い師、彼女の予言の通りになった。 千夏はスターだ。 揺るぎない大女優になったんだ。
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