第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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…… ………… ……………… 隣の店のテラス席では、カメラマンが料理を前に微笑む千夏を撮影してる。 そんな様子を視界の端にかすませながら、エイミーさんの話をずっと聞いていた。 「……それでね、白川千夏のファンはマナーが良いって評判なんだって(モグモグ)。撮影現場に居合わせても仕事の邪魔は絶対しない。ゴミもちゃーんと持ち帰る。と言うか、みんなでゴミを拾うから、撮影前より綺麗になっちゃうみたいだし(モーグモーグ)。なんかね、自分達のマナーが悪いと白川千夏に迷惑がかかるからって自主的にそうしてるみたい(モグモグパクパク)。そういうのってスゴイよね、ファンからめちゃくちゃ愛されてるよ」 そうか……千夏はファンから愛されてるのか。 愛されて大事にされて、応援してもらってるんだな。 「僕もけっこう好きなんだ。最初はドラマが面白いからなんとなく見てたんだけど、白川さんってストイックなんだよね。浮いた噂が立つ暇もないくらい、空いた時間はレッスンばっかりしてるらしいし。それに気遣いの人なんだ。撮影現場に入る時には必ずお菓子を差し入れするし、……って、そんなの珍しくないって思っちゃう? チガウんだなぁ、白川千夏が差し入れするのは共演者とスタッフだけじゃなくってさ、エキストラの分まで用意をするの。自分も昔、売れる前はエキストラをやっていたから大変さが分かるんだって。それを知った時、あ、スキ……! ってファンになっちゃったんだ」 ははは、千夏らしい。 あなたは昔、”エキストラは待ち時間が長くて大変” だと、よくボヤいていたよね、”主演になったら私のペースで撮影する” とも。 今のあなたは立場的に待たされるより待たせる側だ。 それでもあなたは驕らない、主演だろうとエキストラだろうと、同じ作品を作る仲間と思っているんだ。 エイミーさんが熱く千夏を語る中、時折聞こえるシャッター音に心が引っ張られてしまう。 ここからだと千夏の声はかすかにしか聞こえない……が、音としては認識出来る。 落ち着いた話し方だ、堂々として凛とした、大人の女性そのものだ。 ____わぁ、バニラ!  ____え、ちょっと待って!  ____イチニイサンシイ……こんなに!?  ____きゃー! すっごーい! ホワイトベージュの艶の髪、白いシャツにタイトなデニムとスニーカー。 あの頃の幼い千夏は、遠い遠い過去の中だけ存在してる。
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