第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師

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視線がぶつかる、……千夏は大きく目を開き、やはり言葉を発する事なく固まっていた。 おそらく千夏は気がついたのだろう。 自分が ”ジャッキー” であると、酷い言葉で傷つけた最低な男がいると。 本当は、気づかれないままそっと去ろうと思っていたのに……すまない、嫌な思いをさせてるね。 すぐに行くから、千夏の邪魔はしないから、だからどうか安心して。 「エイミーさん、行こうか」 いまだ合掌、拝み続ける若きエースの肩を叩いて歩き出す。 千夏の視線を背中に感じ、それでも決して振り返らずに行こうとしたその刹那。 ガタッ! 音がして、条件反射で振り返る……と。 ああ、……ああ、 声が、出なかった。 隣のテラスで千夏は立って、なにも言わずにただただ自分を見てるんだ。 抜けるような白い肌、整った目鼻立ち、濃いブラウンの髪はゆるく巻かれてる。 薄青色の服はとても上品で、踵の高い黒のヒールは磨き込まれて艶々だ。 どこから見ても美しい、見た目も、立ち振る舞いも……すべてだ。 それなのに____ いつの間にかぶったのか。 いや……そもそも、そんなものをまだ持っていたのか。 今の千夏に到底似合うはずもない、色褪せた古い帽子をかぶっていたんだ。 遠い過去に、中野の街でワゴンで買った安物の野球帽。 千夏はそれを頭に乗せて、そして、声は出さずにこう言った。 ____………………ありがとう、 と。 それはたったの数秒間の出来事だった。 千夏はすぐに帽子を取ると、横に置いてたカバンの中にしまい込み、カメラに向かってほほ笑んだ。 まるでなにもなかったかのように。 …… ………… ……………… その日の帰り、電車の中で千夏の事を考えていた。 あの ”ありがとう” はどんな意味を持つのだろう。 千夏は自分を恨んでいたんじゃなかったのか。 …………ああ、だけど、 もしかしたら………… あの子はとても頭が良くて、人の気持ちに敏感で、……だから後から、自分のウソに気がついたのかもしれないな。 人もたくさんいる中で、自分と千夏が言葉を交わすのは不可能だ。 それゆえに、”ありがとう” の一言に色んな意味を込めたのではないだろうか。 今となっては確かめようがないけれど、……でも、そんな気がしてならないんだ。 千夏、どうかあなたはこれからも頑張って。 もうきっと会う事はないだろうけど、今日会えたのは奇跡だと思ってるんだ。 あなたに会って、自分の心も救われた。 わだかまっていた罪の意識が ”ありがとう” の一言に溶かされたんだ。 自分こそありがとう、やっぱり千夏は素敵な女性(ひと)だ。 そう、あなたは人に愛される、あなたは人に夢を与える。 あなたの演技はあなたにしか出来ない事で、自分はそれをずっと応援してるから。 第六章 霊媒師こぼれ話_ジャッキーと占い師__了 ★こんばんは ジャッキー編がようやく終わりました(*´ω`)ホッ 最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。 千夏とジャッキーを占った ”喫茶・かすり傷” の占い師の女性。 未来をズバズバ当てています。 霊力者でも、過去は視えても未来は視えないはずなのに、どうしてか…… 本当は本編中に種明かしを入れようと思ったのですが、本編が長引いて、コレ入れるとあと3万文字くらい追加になるな……と断念しました💦 設定としては、占い師の女性は地球人ではありません。 ダーマン星の魔族で、人のフリして中野で喫茶店をしています。 ダーマン星の魔族は向こう50年くらいなら未来が視えます。 魔法を使うのがデフォルトの星で、黄泉の国の転送装置の陣を張ったのも彼らです。 また、魔法使いのフェアリーゴッドマザーも同じくダーマン星の出身です……と、書けなかった分、ここに書いてみたのですが……いつか、機会があればそのあたりを書けたらいいなぁと、密かに思っています。 またも長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。 深く感謝申し上げます(*´▽`*) 来週からの新章は、……誰にしようか迷い中です。 楽しんで迷おうと思いますだ✨ たまこ
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