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ポフンッ! と僕に抱き着くルミちゃんは『嬉しい! 嬉しい!』と大はしゃぎだ。
それはそうだろう。
なんてったってこの10年、チビクマの本体は林の中に置き去りで、雨風埃にまみれてた。
モコモコボディは所々に穴が開き、ボタンのおめめは取れかけていた。
全体的にペシャンコで、くたびれ感がハンパないのだ。
これってさ、普通の人なら修復作業を諦めちゃうレベルだよ。
でもね、今日の昼間にキーマンさんは言ったんだ。
____泥だらけでずいぶんとワイルドだが
____最高のプリティベアーに戻してやる!
____Don't worry、
____この程度のリペアーなんてイージービクトリーだっ!
とね。
ホント、ルミちゃんはツイてるよ。
キーマンさんはカワイイ物を愛してやまず、それに加えてスーパー器用な人なのだ。
他の誰にも出来なくたって、キーマンさんなら修復可能。
ココロがオドル、ワクワクする、修復作業に立ち会えるなんて、僕はベリベリハッピーだ!(あ、いけね。キーマンさんがうつっちゃった)
チビクマを抱っこしたまま部屋の中におじゃました。
みんなが集まるその場所は、作業台と思われる大きな机の前だった。
机の上にはこれまた大きなタオルが敷かれ、チビクマの本体はそこでクタッと仰向けになっている。
ああ……改めて見てみると、やっぱり痛みが激しいな。
チビクマは、僕の腕から自分の本体を視てるけど、なんとも言えない表情だ。
こんなになった状態を、直視するのが辛いのかもしれない。
でもダイジョウブ、もうちょっとだよ。
キレイになったら本体に戻って、お姉さまに会いに行こう。
僕達が送って行くから、必ず会わせてあげるから。
長めの髪を一つに結わいたキーマンさんは、机の前で胡坐をかいて、僕に振り向きこう言った。
「チェリーボーイ、ナイスタイミングだ。ジャストナウ、ルミのリペアーをスタートさせる。ミッドナイトミラクルのファーストショット、まずはコイツだ! レッツハッピーブラッシーング!」
ド深夜ゆえに音量抑え目、だけど声はすこぶる弾んで楽しげだ。
それを聞いたチビクマは『やっぱしヘンな喋り方!』とケラケラ笑い、続けて姫も嵐さんも一緒になって笑いだす。
空気はとても穏やかで、そして希望に満ちていた。
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