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シャワワワワー
洗面台に寝かされた、本体の身体にホカホカシャワーがあてられた。
まずは顔、上からそっとお湯をかけられ、キーマンさんが優しくモミモミ揉んでいる。
真ん丸ほっぺ、真ん丸オハナ、続けて真ん丸お耳もモミモミ。
ルミちゃんはそれを視ながら『うわぁ! お湯が茶色くなっちゃった!』と騒いでる。
ん、確かにお湯はまっちゃっちゃ。
そりゃそうだ、なんてったって10年分のヨゴレだもん。
でも大丈夫、これからキレイになるからね。
キーマンさんは鼻歌交じりにゴキゲンだった。
顔が終わるとお次は首で、長い手指を器用に曲げつつグルリと1周。
それが終わると真ん丸胴体。
おなかをモミモミ、わき腹モミモミ、背中もオシリもモミモミモミモミ、もちろん尻尾もモミモミだ。
でもってその次、今度は丸いお手々とアンヨにシフト。
右手モミモミ、左手モミモミ、アンヨもやっぱりモミモミモミモミ。
とまぁ、こんな作業を3セット。
終わる頃には流れるお湯も、濃い茶色から薄茶色へと変わっていった。
『うわぁ! うわぁ! なぁなぁ、おまえたち! なんとなぁく俺の身体、色が明るくなったと思わないか? スゴイなぁ! 俺、最初からキーマンはやる男だと思ってた!』
大興奮のカワユなクマは、ラーメン店の店長みたいな渋いポーズでそう言った(胸の前で腕組むやつね)。
や、だけどまったくその通り。
お湯洗いしかしていないのに、毛皮の色が明るくなってる、顔もなんだか明るく見える。
キーマンさんはココで一旦シャワーを止めると、本体を抱き上げ丸い身体の端から端までチェックした。
で、
「um……(ジー)um……(ジーーー)……オゥイエッス! ビュリフォー! これでだいぶダートが落ちた、ゴーネクストだ! ドミニク、シャボンをここへ」
シャボン?
もしかして、ぬいぐるみ専用のボディーソープとか?
そんな物があるコトすらも知らない僕は、どんなものかとワクワクしながら見てたんだ。
「はい、持ってきたよー」
ニコニコ笑う嵐さんは、すっかり助手のポジションだ。
手にしているのは透明容器、シロツメクサとクローバーが描いてある(ホントになんでも可愛いな)。
「嵐さん、今渡したのって ”ぬいぐるみ専用洗剤” ? すごいね、そんなのあるんだ!」
キーマンさんは忙しそうで、だからこっちに聞いてみた。
すると、年下の先輩は笑いながら言ったんだ。
「ち、ちがうよー。あれは台所の洗剤だよ」
「台所の? てコトは、食器洗うやつ? えぇ? 良いの? ぬいぐるみなのに?」
頭の中に疑問符が飛び交った。
ルミちゃん布だし、お皿やコップじゃないのにさ。
それでホントに汚れが落ちるの?
「う、うん、いいの。ダイジョウブ、心配いらないよ。だ、台所の洗剤って、実はけっこう優秀なんだ。油も落とすし、肌に優しいものが多いしね。そ、それになにより泡切れが良いんだよ。キレイになっても洗剤が残ったままだと、後々布地が痛むから、あえてのチョイス、あえてのキッチンシャボンなの」
ほほー!
そうだったのか!
なるほどなるほど。
洗剤を残さないため、そういう理由があったのか。
さすがだ……クマじゃないけど、僕も最初から思ってた。
キーマンさんはやる男だとね!
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