第七章 霊媒師こぼれ話_レッツハッピーバスタイム

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シャワワワワー 洗面台に寝かされた、本体(クマ)の身体にホカホカシャワーがあてられた。 まずは顔、上からそっとお湯をかけられ、キーマンさんが優しくモミモミ揉んでいる。 真ん丸ほっぺ、真ん丸オハナ、続けて真ん丸お耳もモミモミ。 ルミちゃんはそれを視ながら『うわぁ! お湯が茶色くなっちゃった!』と騒いでる。 ん、確かにお湯はまっちゃっちゃ。 そりゃそうだ、なんてったって10年分のヨゴレだもん。 でも大丈夫、これからキレイになるからね。 キーマンさんは鼻歌交じりにゴキゲンだった。 顔が終わるとお次は首で、長い手指を器用に曲げつつグルリと1周。 それが終わると真ん丸胴体。 おなかをモミモミ、わき腹モミモミ、背中もオシリもモミモミモミモミ、もちろん尻尾もモミモミだ。 でもってその次、今度は丸いお手々とアンヨにシフト。 右手モミモミ、左手モミモミ、アンヨもやっぱりモミモミモミモミ。 とまぁ、こんな作業を3セット。 終わる頃には流れるお湯も、濃い茶色から薄茶色へと変わっていった。 『うわぁ! うわぁ! なぁなぁ、おまえたち! なんとなぁく俺の身体、色が明るくなったと思わないか? スゴイなぁ! 俺、最初からキーマンはやる男(・・・)だと思ってた!』 大興奮のカワユなクマは、ラーメン店の店長みたいな渋いポーズでそう言った(胸の前で腕組むやつね)。 や、だけどまったくその通り。 お湯洗いしかしていないのに、毛皮の色が明るくなってる、顔もなんだか明るく見える。 キーマンさんはココで一旦シャワーを止めると、本体(クマ)を抱き上げ丸い身体の端から端までチェックした。 で、 「um……(ジー)um……(ジーーー)……オゥイエッス! ビュリフォー! これでだいぶダート(よごれ)が落ちた、ゴーネクストだ! ドミニク、シャボンをここへ」 シャボン? もしかして、ぬいぐるみ専用のボディーソープとか? そんな物があるコトすらも知らない僕は、どんなものかとワクワクしながら見てたんだ。 「はい、持ってきたよー」 ニコニコ笑う(らん)さんは、すっかり助手のポジションだ。 手にしているのは透明容器、シロツメクサとクローバーが描いてある(ホントになんでも可愛いな)。 「(らん)さん、今渡したのって ”ぬいぐるみ専用洗剤” ? すごいね、そんなのあるんだ!」 キーマンさんは忙しそうで、だからこっちに聞いてみた。 すると、年下の先輩は笑いながら言ったんだ。 「ち、ちがうよー。あれは台所の洗剤だよ」 「台所の? てコトは、食器洗うやつ? えぇ? 良いの? ぬいぐるみなのに?」 頭の中に疑問符が飛び交った。 ルミちゃん布だし、お皿やコップじゃないのにさ。 それでホントに汚れが落ちるの? 「う、うん、いいの。ダイジョウブ、心配いらないよ。だ、台所の洗剤って、実はけっこう優秀なんだ。油も落とすし、肌に優しいものが多いしね。そ、それになにより泡切れが良いんだよ。キレイになっても洗剤が残ったままだと、後々布地が痛むから、あえてのチョイス、あえてのキッチンシャボンなの」 ほほー! そうだったのか! なるほどなるほど。 洗剤を残さないため、そういう理由があったのか。 さすがだ……クマじゃないけど、僕も最初から思ってた。 キーマンさんはやる男(・・・)だとね!
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