第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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ブンッ、 時間にすれば瞬きひとつ。 ”岡村家” のある現世から、虹の国までひとっ飛び。 私の持ってるスキルの一つ ”惑星単位の瞬間移動”、いつかのそのうち英海(ひでみ)の役に立つ日も来るかと得た技だ。 だがしかし、英海(ひでみ)に役立つその前に、自分の為に使う事になるなどと思ってもみなかった。 ____と、とにかく!  今からでも黄泉の国に逝って前の飼い主さんに会ってきた方が良い、 大福は今でも飼い主さんが好きなんでしょう? ____向こうに着いたらウチに連絡くれる?  本当はカアがついていけたら良いんだけど、 それは無理だからせめて連絡をちょうだい、 そしたら安心出来るから、 ____連絡はどうやってするの?  さっきのリーさんみたいに声で? それとも電話?  だとしたらウチの電話番号、紙に書いて渡しておかなくちゃ、 ____ほにゃぁ、ほにゃあん、 私の英海(ひでみ)は優しくて、そんな英海(ひでみ)のトウとカアも優しくて、命ある猫きなこも同じに優しくて、……私は皆に背中を押されて、元飼い主(お姉ちゃん)に会う為に死人(しびと)の国へとやってきた。 現世から瞬き一つで降り立ったのは、黄泉ではなくて勝手知ったる虹の国。 まずは(ホーム)で気を落ち着けて、私を忘れたお姉ちゃんに会いに行くには覚悟がいるから、だから先に長年一緒に過ごした仲間、みんなの顔が視たかった。 顔を視て、毛皮に触れて甲羅に触れて羽に触れてウロコに触れて……互いに匂いを嗅ぎ合えば、勇気をたくさんもらえるはずだ。 それと理由はもうひとつあり、一足先に戻ったおはぎが心配だった。 今頃は、虹の国の再入国の手続き中だと思うのだけれど、ちゃんと手続き出来てるかしら。 ただでさえおはぎはコドモで心配なのに、家族に会えた幸せで手続きどころじゃなさそうだもの(それはそれで仕方がない)。 英海(ひでみ)じゃないけど、コドモ(おはぎ)には手厚い保護が必要だ。 とりあえず、無事に着いたと現世に伝え、明け方の紫がかった空の下 ”ニャン、ツー、スリー!” でひた走る。 目的地は虹の事務所で東の方角。 昇る朝日は大地も小川も眩く金に染め上げていた。 e871e3c6-e588-4c70-bfe0-ba11f73c9eb1
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