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なんにゃかんにゃとバタバタしたけど、オヤツ効果でおはぎはすこぶるやる気になって、手続きはお昼前に無事終了。
私とシヴァでおはぎを褒めると、
『小雪、小雪! トウとカアのオヤツ、今ココでひとつちょーだい!』
あらら、困った仔猫だわ。
みんなで食べると言ったじゃない。
でもいいわ、おはぎはとっても頑張ったもの。
今日は特別、先にひとつ ”ちゅるー” をあげる(現世で食べてすっかりおはぎのお気に入り)。
『はい、どうぞ……って、うな……おはぎじゃコレは開けられないわね。ダイジョブよ、待ってなさい。私が開けてあげるから、』
英海は5kgと思っているけど、本当は6kgゴージャスボディ。
そんな私の爪にかかれば ”ちゅるー” なんぞヨユーで開けれる。
万が一にも開けられなければ、三尾の妖力でスパァッと切ってあげるわよ、…………と、思っていたのに。
パウチのまんまで開封前の、”ちゅるー” をハムッと咥えたおはぎは数歩の距離をタタッと小走り、着いたのは横に立ってるシヴァの足元。
仔猫はそこで上を向き、
『ふがふがふが、ふがふがー』←”ちゅるー” を咥えてるから喋れない
ニコニコしながら尻尾をフリフリ、シヴァに ”ちゅるー” を差し出した。
『も、もしかして……オヤツ、シヴァにもくれるの?』
聞きながらしゃがみ込むシヴァ、斑の綿毛は ”ふがふが” 言ってコクコク頷く。
『大事なオヤツなのに良いの? やだ……おはぎちゃん、ありがとね、シヴァはすごく嬉しいよ……!(ブワッ!!)』
あらぁ、シヴァったらまた泣いちゃった。
まぁでも、これは仕方がないわよねぇ。
仔猫にこんなコトをされた日には、ウチの英海も絶対泣くわ。
……
…………
聞いた話じゃ遠い過去、ダーマン星でリーもシヴァも同じ時代に生きていた。
リーは龍族、シヴァは神族。
種族の違う戦闘民は、些細な事がきっかけで対立し、その戦いは百年近くも続いたという。
生者の頃は敵同士、何度も死闘を繰り広げたその挙句、互いに互いを刺し違え、リーもシヴァもほぼほぼ同時に黄泉の国へとやって来た。
水を操る巨大な龍と、氷を操る人型のシヴァ(シヴァの姿は肌の色が薄青であるコト以外は地球の女人とよく似てる)。
長い間戦い続け、黄泉でも当然再会すれば戦闘開始になるはずが……ならなかった。
なぜなら両者、生きてた頃は言えなかったが動物達が大好きで、黄泉に来てすぐ虹の国で働きたいと希望を出していたからだ。
そして、
____ケンカをするなら虹の国では働けないよ、
虹の国の職員採用試験、その面接時にそう言われ、リーもシヴァも ”それは困る……!” とアッサリ和解で三百年強、今ではすっかり仲良しなのにゃ。
英海じゃないけど動物ってスゴイわね。
百年近くいがみ合ってた龍族と神族を、なんにもしないで存在だけで取り持つなんて、他に誰が出来ようか。
…………
……
『おはぎちゃん、小雪ちゃん、フタニャンとも気を付けてオウチに帰るのよ。あ、それから小雪ちゃんは、現世に戻る前にかならずシヴァに会いに来てね。黙って戻ったらイヤよ、ぎゅーって抱っこするんだから!』
事務センターの玄関で大きく両手を振るシヴァに、私もおはぎも尻尾を振ってバイバイし、広い野原をテチテチ歩いてオウチを目指す。
着くのはそうねぇ、夕方頃になるかしら。
距離は大してないけれど、途中できっといろんな仔達に会うはずだもの!
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