第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

7/80
前へ
/370ページ
次へ
◆ なんにゃかんにゃとバタバタしたけど、オヤツ効果でおはぎはすこぶるやる気になって、手続きはお昼前に無事終了。 私とシヴァでおはぎを褒めると、 『小雪、小雪! トウとカアのオヤツ、今ココでひとつちょーだい!』 あらら、困った仔猫だわ。 みんなで食べると言ったじゃない。 でもいいわ、おはぎはとっても頑張ったもの。 今日は特別、先にひとつ ”ちゅるー” をあげる(現世で食べてすっかりおはぎのお気に入り)。 『はい、どうぞ……って、うな……おはぎじゃコレは開けられないわね。ダイジョブよ、待ってなさい。私が開けてあげるから、』 英海(ひでみ)は5kgと思っているけど、本当は6kgゴージャスボディ。 そんな私の爪にかかれば ”ちゅるー” なんぞヨユーで開けれる。 万が一にも開けられなければ、三尾の妖力(チカラ)でスパァッと切ってあげるわよ、…………と、思っていたのに。 パウチのまんまで開封前の、”ちゅるー” をハムッと咥えたおはぎは数歩の距離をタタッと小走り、着いたのは横に立ってるシヴァの足元。 仔猫はそこで上を向き、 『ふがふがふが、ふがふがー』←”ちゅるー” を咥えてるから喋れない ニコニコしながら尻尾をフリフリ、シヴァに ”ちゅるー” を差し出した。 『も、もしかして……オヤツ、シヴァにもくれるの?』 聞きながらしゃがみ込むシヴァ、斑の綿毛は ”ふがふが” 言ってコクコク頷く。 『大事なオヤツなのに良いの? やだ……おはぎちゃん、ありがとね、シヴァはすごく嬉しいよ……!(ブワッ!!)』 あらぁ、シヴァったらまた泣いちゃった。 まぁでも、これは仕方がないわよねぇ。 仔猫にこんなコトをされた日には、ウチの英海(ひでみ)も絶対泣くわ。 …… ………… 聞いた話じゃ遠い過去、ダーマン星でリーもシヴァも同じ時代に生きていた。 リーは龍族、シヴァは神族。 種族の違う戦闘民は、些細な事がきっかけで対立し、その戦いは百年近くも続いたという。 生者の頃は敵同士、何度も死闘を繰り広げたその挙句、互いに互いを刺し違え、リーもシヴァもほぼほぼ同時に黄泉の国へとやって来た。 水を操る巨大な龍と、氷を操る人型のシヴァ(シヴァの姿は肌の色が薄青であるコト以外は地球の女人(じょじん)とよく似てる)。 長い間戦い続け、黄泉でも当然再会すれば戦闘開始になるはずが……ならなかった。 なぜなら両者、生きてた頃は言えなかったが動物達が大好きで、黄泉に来てすぐ虹の国で働きたいと希望を出していたからだ。 そして、 ____ケンカをするなら虹の国では働けないよ、 虹の国の職員採用試験、その面接時にそう言われ、リーもシヴァも ”それは困る……!” とアッサリ和解で三百年強、今ではすっかり仲良しなのにゃ。 英海(ひでみ)じゃないけど動物ってスゴイわね。 百年近くいがみ合ってた龍族と神族を、なんにもしないで存在だけで取り持つなんて、他に誰が出来ようか。 ………… …… 『おはぎちゃん、小雪ちゃん、フタニャンとも気を付けてオウチに帰るのよ。あ、それから小雪ちゃんは、現世に戻る前にかならずシヴァに会いに来てね。黙って戻ったらイヤよ、ぎゅーって抱っこするんだから!』 事務センターの玄関で大きく両手を振るシヴァに、私もおはぎも尻尾を振ってバイバイし、広い野原をテチテチ歩いてオウチを目指す。 着くのはそうねぇ、夕方頃になるかしら。 距離は大してないけれど、途中できっといろんな仔達に会うはずだもの!
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

472人が本棚に入れています
本棚に追加