第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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◆ 事務センターからしばらく歩くと大きな広場が視えてきた。 ああ、懐かしいわねぇ。 果てまで広がるフカフカ芝生に美味しいお水が流れる小川、たくさん生えてるノッポの木々は登ってそのままお昼寝したって最高なのよ。 キレイなお花、色んな形の木の実もいっぱい……そしてなにより、虹にいた頃毎日顔を合わせてた、視知った仲間がここにはいるの。 視渡せば、犬の子ヘビの子ウサギの子、猫の子カメの子フェレットも……ああ、本当に懐かしい、みんな元気そうじゃない。 広場の端からおはぎとフタニャン。 目を細めて眺めていると、白い毛皮のせいなのか早々に視つかって、 『……ニョロロ? ニョニョ……ニョロ!? おはぎ! 小雪もっ!?』 『ピョ!? ほんとだ! 小雪チュンだ!』 『小雪! やっと帰ってきたピョン!』 『小雪(コユ)! 会いたかったワン!』 わーーーーーーーーー!! にゃっと言う間に囲まれた。 みんなは泣いていた。 戻ってこれて良かったねぇとか、匂いを嗅がしてほしいとか、寂しかった、会いたかった、遊びたかったと口々言われて胸の奥が熱くなる。 みんなが私を忘れてなくて、みんながこんなに優しくて、幸せを感じずにはいられなかった。 そんな優しい仲間達の中、どの子よりも泣いていたのはヘビのコンちゃんだった。 『うわぁぁん! ニョロロォォォ……ひっく、ひっく、えぐえぐ……良かった……おはぎも無事に帰ってこれて……本当に良かった……ニョロロ……ひっく……怖かったよ……万が一おはぎになにかあったら……そう考えたらボク……ボク……ニョロロー!』 オレンジ色の長い霊体(からだ)を芝生の上で縮こませ、しゃくりあげて震えてる、…………ああ、そうだったわね……現世に行くと決めたおはぎを手助けしたのはコンちゃんだもの。 それだって、悩みに悩んで助けたの。 もしもおはぎに何かがあったら、この先ずっと自分を責めたに違いない。 だからこそ、無事に戻ったおはぎを視てホッとしたんだわ。 コンちゃんの大泣きに、事情を知らない他の子達はどうしていいか分からずにいた。 唯一事情を知ってる(と言うか当事者だけど)、おはぎがすぐに駆け寄ると、泣いてる顔をザリザリ舐めてこう言った。 『コンちゃん……コンちゃん……へにゃ……泣かないで、おはぎはかえってきたよ……へにゃ……ごめんね……泣かしちゃって、コワイ思いさせてごめんね。でもね、コンちゃんのおかげでトウとカアにあえたんだにゃ、おはぎのコト、わすれてなかったの、ダイスキっていっぱい言ってもらえたにゃ、おはぎは安心したんだにゃ、すごくすごく嬉しかったんだにゃ、みんなコンちゃんのおかげなんだにゃ、……コンちゃん……ひっく……ひっく……ほんとうにありがとね……ひっくひっく……ぜんぶコンちゃんのおかげなんだにゃ、うわぁぁぁん』 コンちゃんに ”ごめんなさい” と ”ありがとう” を伝える仔猫、……だけどとうとう堪えがきかず、ヘビと猫は抱き合って泣いてしまったのだ。
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