第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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仔猫の元気な『ただいま』に、広い部屋のアッチコチから『おかえりにゃー』の声がした。 いろんな場所からひょこっ、ひょこっと顔を出すのは、白猫黒猫、パンダ猫に三毛猫と、あとは三つ子のトラセット(”茶トラ”、”キジトラ”、”サバトラ”)。 おはぎを入れたら全部で8匹、岡村家の猫達(こどもたち)……なんだけど、私の顔を視た途端、全ニャン揃ってお口パカンで固まった。 しばしの沈黙。 それを最初に破ったのは……これまた仲良く全ニャンだった。 『なな……! 小雪さん!』←ビックリ顔の熟女、三毛猫のサン 『こゆゆ! こゆゆだー!』←ハチワレ模様のパンダ猫、シャチ 『『小雪が帰ってきた!』』←白と黒の双子猫、しらたまとくろたま 『はにゃっ! 小雪だっ!』←トラセット1匹目、茶トラの茶々丸 『ひにゃっ! 小雪丸っ!』←トラセット2匹目、キジトラのキジ丸 『ふにゃっ! 本物か!?』←トラセット3匹目、サバトラのサバ丸 ス、スゴイわ、さすがは家族ね。 みんなで同時に固まって、今度は同時に喋り出す。 こんなトコまで息がピッタリ……なんて驚いたけど、感心するのはまだ早かった。 猫達は、 にゃーーーーーーー! と同時に駆け出して、またもシンクロ、次々ジャンプで私の上に降ってきた。 う˝なっ! ちょ! 重っ! ぐはっ! まって! ホントに!  飛び掛かられて乗っかられ、猫達は私の匂いをフゴフゴ嗅いで、ついでに毛皮もザリザリしながら、いつまで経っても離れてくれない。 困ったわ……嬉しいけどさすがに重くて、このままだと ”押し寿司” ならぬ ”押し猫又” になってしまう。 仕方がないから ”ちょっとどいて” 言おうとしたの、……でも。 猫達はひっついて、合間合間に『おかえり』とか『良かったね』とか言いながら、鼻をグズグズさせている……が、それだけじゃなかった。 私もおはぎも着いたばかりで何も話していないのに、 ____小雪は今日からココで一緒に暮らせばいいにゃ! 私がボッチにならないように、寂しい思いをしないように、笑って過ごせるように……そう、言ってくれたのよ。 …………ああ、もう、……もう、もうもうもう、 岡村家はみんなシンクロ。 英海(ひでみ)もそうだしトウとカアも猫達も、おんなじ事を私に言うの。 離れていても息がピッタリ合っている。 ありがとう、ん……嬉しいにゃ。 だからうんと重いけど、もう少しガマンする。 このままくっつき団子になっていたいから。
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