第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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◆ その晩は、私にとって忘れられない日となった。 …… ………… 総勢8匹。 私に乗っかる猫達にどいてもらい(重くて限界だった)、手短にこれまでの経緯を説明した。 まず最初に話したコトは、おはぎがどうして無茶をしてまで現世に行ったのか……だったんだけど、その瞬間、サンの尻尾がブワッと膨らみ『そうだった! ちゃんと理由を説明しなさい!』と斑の仔猫に詰め寄った。 寄られた斑はお耳ペターのイカミミで、私の後ろにササッと避難し、自分の尻尾をおなかに畳んでそれをちゅーちゅー吸いだす始末(コワイから落ち着こうとしたのかも)。 その姿があまりにおかしく、あやうくサンは吹き出すトコロだったのだけど ”岡村家のカア代行” の威厳を保つその為に、どうにかこうにか耐えきった(よく耐えたわね、他の仔達は大爆笑よ)。 おはぎはそれに気づいてないから、いつまで経っても ”へにゃへにゃ” 言ってて埒が明かない。 にゃもんで、仕方がないから私が代わりに説明したの。 『ごめんなさい。それは私のせいだわ。ほら……私、お姉ちゃんに忘れられたでしょう? お姉ちゃん……目の前までやってきたのに、私のコトはスルーしてハムの小雪に行っちゃったじゃない。その現場、おはぎに視られていたのよね。だから怖くなったのよ。自分も忘れられてたらどうしようって、不安で不安で仕方がなくて、それで現世に、ちゃんと覚えているのか確かめたくて、トウとカアに会いに行ったの』 根本の理由を話せば暗い話になっちゃうから、なるべく明るく言ったつもりでいたけれど…… 『『『『『『『『……………………』』』』』』』』 聞いた猫ズは揃いも揃って固まった。 う、うなな、気のせいかしら……今スッゴイ気を遣われてる感じがする。 良いのに、もうダイジョブなのに、いっそのコト笑ってくれたら良いのに……って、さすがにムリね。 でも、結果はオーライ。 どの猫も、いやサンでさえ、この話を広げる勇者はいないみたいで、おはぎの話は早々に強制終了されたのだ。 んで、なんとも言えないこの空気を変える為にも明るい話にシフトした。 私が今、現世で一緒に暮らしているのは岡村家の一人息子の英海(ひでみ)であるコト。 それと、なんだかんだで少し前、私もトウとカアの子供になったコト。 それを話すと猫達は、ぱぁぁぁぁ! と顔を明るくさせて、黒目真ん丸、髭は前向き、三角耳をぴょこぴょこさせて、長短それぞれ尻尾をフリフリ……早い話が喜んでくれたのよ。 そこからはバタバタだった。 猫達はアッチコッチに走り出し、部屋の奥から真新しいクッションを運んでくると、意気揚々と私にそれを使えと言った。 色は白、さわってみるとフカフカで寝心地がとっても良さそう。 その他にも毛糸玉に猫じゃらし、猫用の小さな毛布と陶器で出来たゴハン皿とお水皿、次々出しては床の上に並べていくから、そこはまるでお店みたいになっていた。 『小雪さん、足りないものはないかしら』 猫達のまとめ役、しっかり猫のサンが聞く。 『いいえ、充分よ。サン、ありがとう。ほかのみんなもありがとう』 遠慮じゃなくてホントに充分足りている。 聞けば、猫好きのトウとカアは次々猫を飼うはずだから、その仔達が天寿を終えて虹に来た時、すぐにでも一緒に生活出来るようにと ”家族お迎えセット” を常時2~3は用意しているらしく、そのセットを猫達は、私の為にと当たり前に出してきた。 そして、 『はにゃ! オレ、絶対そうなると思ってた!』←大威張りの茶々丸 『ひにゃ! んだな! オレもそう思ってた!』←得意顔のキジ丸 『ふにゃっ! オレはずっと前から知ってた!』←ウソつけー! トラの仔達がはしゃぎだし、新しい家族としての一晩目を迎えたのだ。
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