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◆
その晩は、私にとって忘れられない日となった。
……
…………
総勢8匹。
私に乗っかる猫達にどいてもらい(重くて限界だった)、手短にこれまでの経緯を説明した。
まず最初に話したコトは、おはぎがどうして無茶をしてまで現世に行ったのか……だったんだけど、その瞬間、サンの尻尾がブワッと膨らみ『そうだった! ちゃんと理由を説明しなさい!』と斑の仔猫に詰め寄った。
寄られた斑はお耳ペターのイカミミで、私の後ろにササッと避難し、自分の尻尾をおなかに畳んでそれをちゅーちゅー吸いだす始末(コワイから落ち着こうとしたのかも)。
その姿があまりにおかしく、あやうくサンは吹き出すトコロだったのだけど ”岡村家のカア代行” の威厳を保つその為に、どうにかこうにか耐えきった(よく耐えたわね、他の仔達は大爆笑よ)。
おはぎはそれに気づいてないから、いつまで経っても ”へにゃへにゃ” 言ってて埒が明かない。
にゃもんで、仕方がないから私が代わりに説明したの。
『ごめんなさい。それは私のせいだわ。ほら……私、お姉ちゃんに忘れられたでしょう? お姉ちゃん……目の前までやってきたのに、私のコトはスルーしてハムの小雪に行っちゃったじゃない。その現場、おはぎに視られていたのよね。だから怖くなったのよ。自分も忘れられてたらどうしようって、不安で不安で仕方がなくて、それで現世に、ちゃんと覚えているのか確かめたくて、トウとカアに会いに行ったの』
根本の理由を話せば暗い話になっちゃうから、なるべく明るく言ったつもりでいたけれど……
『『『『『『『『……………………』』』』』』』』
聞いた猫ズは揃いも揃って固まった。
う、うなな、気のせいかしら……今スッゴイ気を遣われてる感じがする。
良いのに、もうダイジョブなのに、いっそのコト笑ってくれたら良いのに……って、さすがにムリね。
でも、結果はオーライ。
どの猫も、いやサンでさえ、この話を広げる勇者はいないみたいで、おはぎの話は早々に強制終了されたのだ。
んで、なんとも言えないこの空気を変える為にも明るい話にシフトした。
私が今、現世で一緒に暮らしているのは岡村家の一人息子の英海であるコト。
それと、なんだかんだで少し前、私もトウとカアの子供になったコト。
それを話すと猫達は、ぱぁぁぁぁ! と顔を明るくさせて、黒目真ん丸、髭は前向き、三角耳をぴょこぴょこさせて、長短それぞれ尻尾をフリフリ……早い話が喜んでくれたのよ。
そこからはバタバタだった。
猫達はアッチコッチに走り出し、部屋の奥から真新しいクッションを運んでくると、意気揚々と私にそれを使えと言った。
色は白、さわってみるとフカフカで寝心地がとっても良さそう。
その他にも毛糸玉に猫じゃらし、猫用の小さな毛布と陶器で出来たゴハン皿とお水皿、次々出しては床の上に並べていくから、そこはまるでお店みたいになっていた。
『小雪さん、足りないものはないかしら』
猫達のまとめ役、しっかり猫のサンが聞く。
『いいえ、充分よ。サン、ありがとう。ほかのみんなもありがとう』
遠慮じゃなくてホントに充分足りている。
聞けば、猫好きのトウとカアは次々猫を飼うはずだから、その仔達が天寿を終えて虹に来た時、すぐにでも一緒に生活出来るようにと ”家族お迎えセット” を常時2~3は用意しているらしく、そのセットを猫達は、私の為にと当たり前に出してきた。
そして、
『はにゃ! オレ、絶対そうなると思ってた!』←大威張りの茶々丸
『ひにゃ! んだな! オレもそう思ってた!』←得意顔のキジ丸
『ふにゃっ! オレはずっと前から知ってた!』←ウソつけー!
トラの仔達がはしゃぎだし、新しい家族としての一晩目を迎えたのだ。
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