第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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新しく ”小雪セット” が揃ったトコロで、おはぎがソワソワしはじめた。 私のまわりを行ったり来たりで目線は上を向いている、……にゃにゃーん、さてはオヤツが気になってるのね。 そうよね、ずっと我慢をしてたんだもの。 分かったわ、そろそろみんなで食べましょう。 『おはぎ、おいで。うなな! みんなもチョット来てくれる? あのね、実はね、現世にいるトウとカアがオヤツを持たせてくれだんけど……』 と、声を掛けたその瞬間、 『へにゃ! まってたにゃーっ!』←斑の仔猫 『『『『『『『にゃぬ!?』』』』』』』←のこる7匹 ココ1番の機敏な動きで、にゃっと言う間にグルリとまわりを囲まれた。 そして、 『トウとカアがオヤツを!?』←いつもの落ち着きドコ行った、三毛猫のサン 『トウとカアがみんなに!?』←お口パッカーン、ハチワレ模様のシャチ 『『トウもカアも大好き!』』←オセロな双子、しらたまとくろたま 『はにゃっ! ちゅるー!!』←ちゅるー大好き、茶トラの茶々丸 『ひにゃっ! シーパッ!!』←シーパ大好き、キジトラのキジ丸 『ふにゃっ! ヒデミッ!?』←英海(ひでみ)はオヤツではない、サバトラのサバ丸 『へにゃ! はやくはやく!』←昼から待ってた、綿毛のおはぎ にゃんにゃかにゃんにゃか大騒ぎが始まったのよ(こうなると思っていたけど)。 『うなな! みんな落ち着いて! 大丈夫よ、いっぱいあるから! 今出してあげr、あ、ちょ、茶々丸近い近い! サバ丸も近っ! キジ丸はなんで踊ってるの! うなっ! おはぎはまた尻尾吸って!』 うなははは! オヤツを出したいだけなのに、なんでこんなに大変なのよ! 本当にもう、家族が増えると賑やかね。 英海(ひでみ)と一緒も楽しいけれど、猫同士でわちゃわちゃするのも悪くない。 はしゃぐ猫ズをなんとかおさえて前足2本を華麗にゴソゴソ。 首に下げてる風呂敷包みを(ホントはカアのハンカチ(大)だけど)ほどいて降ろして床の上に広げたの。 そこにあるのは ”ちゅるー” と ”シーパ”、味違いで色んな種類が混ざってる。 それと、ラップに包んだ無添加カリカリ、これもやっぱり味違いで大量だ。 ぜんぶを並べ終えた途端、 『『『『『『『『にゃぁぁぁぁぁぁぁ♪』』』』』』』』 歓声が沸き上がる、その同時。 ……スンスン、 …………スンスンスンスン、 ………………スンスンスン、 目を閉じた猫達が、揃って匂いを嗅ぎだした。 …… ………… 美味しいオヤツ、 懐かしいオヤツ、 生きてた頃に食べてたオヤツ、 大好物は目の前で、すぐにでも食べるものだと思ってた。 だけど食べない、……猫達は気が付いたのだ。 美味しそうなオヤツの匂いに紛れ込み、大好きなトウとカアと英海(ひでみ)の匂いがしてると。 スンスン…… スンスンスンスン…… スンスンスン…… それからしばらく…… 猫達は鼻の頭を擦りつけ、声も出さずに家族の匂いを嗅いでいたのだ。
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