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あれだけあったオヤツの山は、にゃっという間に無くなった。
私も含めた総勢9匹。
トウとカアが持たせてくれた、特別美味しいオヤツを食べて大満足。
この後みんなで積もる話や現世の話に花が咲いて盛り上がり……とはならなかった。
そりゃそうにゃ。
”猫” という名の語源は ”寝る子” で伊達じゃない(諸説アリ)。
その証拠に……
『へにゃぁ……(ウトウト)オヤツおいしかったにゃぁん……(うつらうつら)おなかがポンポンで……(ユラユラ)もうたべられないにゃぁ……』
おはぎが船を漕ぎだした。
それはオトナもおんなじで、幸せいっぱい腹いっぱいな猫達も一緒になって船を漕ぎだし……そしてとうとう、サン以外は全ニャン揃ってスヨスヨ眠りに落ちたのだ。
……
…………
『みんな寝ちゃったわね、』
私が言うとサンは短く ”ええ” と言い、宙を泳ぐサカナのライトにピョンッとジャンプでタッチした。
途端、明かりが絞られ暗くなる。
賑やかだった部屋は静かで、猫達の寝息だけが重なり聞こえるだけだった。
薄暗い部屋の中。
私とサンは向かい合わせに寝転んだ。
サンは三毛の熟女猫。
しっかり猫で面倒視が良く礼儀も正しい。
性格的には自由気ままな猫と言うより、犬に近いものがある。
享年は19才で(人の子換算なら92才)猫にしては大往生だ。
サンは鼻から息を吐くと、静かな声でこう言った。
『小雪さん、現世ではおはぎがお世話になりました。それとオヤツもありがとうございます。オヤツ、とっても美味しかった……ううん、それだけじゃない。久しぶりにトウとカアと英海の匂いが嗅げたのも嬉しかった。私も、みんなも、……本当に涙が出る程嬉しかったの』
目を細めて髭を前に、長い尻尾はゆっくり左右に揺れている。
トラセットやおはぎみたいに大はしゃぎはしないけど、嬉しい気持ちは十分伝わる。
そうよね、……嬉しいわよね。
サンは一番年上で ”カア代行” の役目もあるから、いつでもしっかりしてるけど、トウとカアの子供であるのはみんなと同じなんだもの。
大好きに決まってる、会いたいに決まってる、匂いを嗅げて嬉しいに決まってる。
だから私は話したの。
トウもカアも、もちろん英海も、今でもみんなを愛してて、家の中にはみんなの写真が飾ってあって、みんなの形見も大事に大事にとってあり、いつか命を終えた時には必ず虹まで迎えにいく。
それまでは子供達で仲良く過ごし、良く食べて良く眠り良く遊び、元気に笑って待っててほしいとと言っていた……と。
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