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『そう……トウとカアがそんな事を……』
囁くような小さな声は尻つぼみ。
代わりに喉がゴロロゴロロと鳴り出した。
サンは嬉しそうだった。
白地に黒と茶色が混ざる三毛柄の、大きな霊体をモゾモゾさせては尻尾をゆっくり揺らしてる。
そんなサンと目が合うと、首を伸ばして私のオデコをザリンと一舐め。
だから私も頭の海苔を(黒い毛ゾーン)一舐め、二舐め。
互いに互いを毛繕いし合ったの。
ザーリザーリ
ザーリザーリザーリ
猫同士の毛繕い、それは親愛の証し。
元々仲が良かったし、今までだって何度もしてきたコトだけど、家族になっては初めてだ。
『…………サン(ザーリザーリ)、これからよろしくね』
『(ザリーンザリーン)私こそ……よろしくお願いします、』
今さらながらの挨拶が、嬉しいやら恥ずかしいやら……なんだけど一応ね。
フタニャンともオトナ猫だし、特にサンはキチンとしてるし、これくらいは言っとかなくちゃと思ったの。
だけどこの後、サンが続けた言葉を聞いて、私は思わず吹き出したのよ。
『みにゃぁぁぁ……本当に嬉しい……! 小雪さんが家族になったら大助かりだわ! 知ってるとは思うけど、おはぎはコドモでなにやらかすか分からないし、トラの仔達はイタズラばかりで毎日お祭り騒ぎなの! あの仔達の面倒視るのがそりゃあもう大変で、私だけじゃあ手一杯! 今回だって、突然おはぎがいなくなって慌てて虹中探したわ……でもね、探せど探せど視つからなくて冷や汗掻いてどれだけ心配した事か! それがまさか……黙って現世に行ってるなんて思わないじゃない……はぁ。だから小雪さん、(ミニャリ……)あの仔達の面倒含めてこれから一緒に、是 非 と も よろしくお願いしますっ!(キラキラキラ)』
ぶはっ!
……って、笑っちゃダメよね、サンはすこぶる真剣だもの。
だ、だけど、圧がスゴイわ……!(すごすぎて笑っちゃう)
一緒に面倒視てほしいと、ココロの底から訴えている。
うなな……だけどまぁ、その気持ち、分からなくはない。
これまで私も虹に住んでて、ずっと傍で視てたんだもの。
おはぎもトラズも、ホントにいろいろやらかして、サンにどんなに怒られたとて、決してへこたれないのよね(へこたれなさいよ)。
岡村家の ”カア代行” は思った以上に大変そうだわ。
でもそうね、サンは享年19才で、私はキッカリ20才……ココはオトナがしっかりしないと。
『分かったわ……私も虹にいる間、サンと一緒に面倒視るから、どうか安心してちょうだい!』
ふんー! と鼻から息を吐き、気合いを入れて答えたの。
聞いたサンは、てっきり喜ぶものだと思っていたが、
『”私も虹にいる間”……? え……? 小雪さん、帰ってきたんじゃないの? ずっと虹にいてくれるんじゃないの?』
小首を傾げて訝し気に言ったのよ。
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