第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

14/80
前へ
/370ページ
次へ
『そう……トウとカアがそんな事を……』 囁くような小さな声は尻つぼみ。 代わりに喉がゴロロゴロロと鳴り出した。 サンは嬉しそうだった。 白地に黒と茶色が混ざる三毛柄の、大きな霊体(からだ)をモゾモゾさせては尻尾をゆっくり揺らしてる。 そんなサンと目が合うと、首を伸ばして私のオデコをザリンと一舐め。 だから私も頭の海苔を(黒い毛ゾーン)一舐め、二舐め。 互いに互いを毛繕いし合ったの。 ザーリザーリ ザーリザーリザーリ 猫同士の毛繕い、それは親愛の証し。 元々仲が良かったし、今までだって何度もしてきたコトだけど、家族になっては初めてだ。 『…………サン(ザーリザーリ)、これからよろしくね』 『(ザリーンザリーン)私こそ……よろしくお願いします、』 今さらながらの挨拶が、嬉しいやら恥ずかしいやら……なんだけど一応ね。 フタニャンともオトナ猫だし、特にサンはキチンとしてるし、これくらいは言っとかなくちゃと思ったの。 だけどこの後、サンが続けた言葉を聞いて、私は思わず吹き出したのよ。 『みにゃぁぁぁ……本当に嬉しい……! 小雪さんが家族になったら大助かりだわ! 知ってるとは思うけど、おはぎはコドモでなにやらかすか分からないし、トラの仔達はイタズラばかりで毎日お祭り騒ぎなの! あの仔達の面倒視るのがそりゃあもう大変で、私だけじゃあ手一杯! 今回だって、突然おはぎがいなくなって慌てて虹中探したわ……でもね、探せど探せど視つからなくて冷や汗掻いてどれだけ心配した事か! それがまさか……黙って現世に行ってるなんて思わないじゃない……はぁ。だから小雪さん、(ミニャリ……)あの仔達の面倒含めてこれから一緒に、是 非 と も よろしくお願いしますっ!(キラキラキラ)』 ぶはっ!  ……って、笑っちゃダメよね、サンはすこぶる真剣だもの。 だ、だけど、圧がスゴイわ……!(すごすぎて笑っちゃう) 一緒に面倒視てほしいと、ココロの底から訴えている。 うなな……だけどまぁ、その気持ち、分からなくはない。 これまで私も虹に住んでて、ずっと傍で視てたんだもの。 おはぎもトラズも、ホントにいろいろやらかして、サンにどんなに怒られたとて、決してへこたれないのよね(へこたれなさいよ)。 岡村家の ”カア代行” は思った以上に大変そうだわ。 でもそうね、サンは享年19才で、私はキッカリ20才……ココはオトナがしっかりしないと。 『分かったわ……私も虹にいる間、サンと一緒に面倒視るから、どうか安心してちょうだい!』 ふんー! と鼻から息を吐き、気合いを入れて答えたの。 聞いたサンは、てっきり喜ぶものだと思っていたが、 『”私も虹にいる間(・・・・・・・)”……? え……? 小雪さん、帰ってきたんじゃないの? ずっと虹にいてくれるんじゃないの?』 小首を傾げて訝し気に言ったのよ。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

472人が本棚に入れています
本棚に追加