第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

16/80
前へ
/370ページ
次へ
当時はまだ幼かったお姉ちゃん。 人の子とは言え集まるカラスは怖いだろうに、それでも必死に大声出して、両手を振り上げ追い払ってくれたのよ。 あの時の事、今でもちゃんと覚えてる。 私を囲む黒い影が無くなって、代わり、小さな両手に抱き上げられた。 突つかれた私の身体は血だらけで、……ううん、それだけじゃない。 生まれた時から野良の私は、埃だらけの泥だらけ。 ノミもいっぱいいたはずなのに、お姉ちゃんはまるでそんなの気にしてなかった。 私を抱いて足早に家に帰ると、 「ママァ!! 猫ちゃんが死んじゃうぅぅ!!」 って叫んでた。 今思えば、お母さんもびっくりよね。 幼い娘が帰ってきたと思ったら、血だらけのキタイナイ仔猫を抱えて大泣きしてるんだもの。 でもね、お母さんも優しい人だった。 あれこれ事情を聞く前に、大きなタオルで私をくるむと、娘を連れて自転車漕いで……そう、向かった先は動物病院。 そこで私は治療を受けて一命を取り留めたの。 治療を終えて、でも、だからといってすぐに元気に歩けるでもなく、身体中がズキズキ痛むしお腹はペコペコ。 このあと私はどうなるのかと不安で不安でたまらなかった。 助けてはくれたけど……こんな身体で次にカラスに襲われたら、悪童共に追いかけられたら、走って逃げる事すらできない。 私はどこで降ろされるのか、元いた場所に戻されるのか、そう考えると気が気じゃなかった。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

471人が本棚に入れています
本棚に追加