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病院の帰り道。
自転車を漕ぐお母さんと私を抱えるお姉ちゃんが、なにやら色々話してた。
一体なにを話しているのか、当時は分からなかったけど、後から……本当に、随分月日が経ってから思い出し、時間差で分かったの。
あの日のお母さんは、
せっかく娘が助けた子猫を見捨てる事はできなかった。
だから治療を受けさせたけどウチでは飼えない。
誰か良い人に貰ってもらおう。
それまではウチで面倒みるけれど、情が移るといけないから名前をつけたりしない事、……と、そう言って、
それに対してお姉ちゃんは、
ぜったいヤダ!
この仔はこんなに小さくて、ひとりぽっちでお外にいたの。
私にはママがいるけど、この仔にはいないみたい。
かわいそうだよ、きっとすっごく淋しいよ。
だから私がこの仔のママになってあげたい。
ねぇ、お願い、この仔を飼っても良いでしょう?
私、良い子にするから、勉強もお手伝いもいっぱいするから。
おこづかいもいらないしお年玉もいらないよ。
お誕生日もクリスマスもなくていいから、だからお願い、
そう言ってわんわん泣いて、お母さんを困らせたんだ。
その日の晩は、お姉ちゃんの家に連れて帰ってもらい、タオルを敷いた段ボール箱に寝かされた。
初めてだった、……雨風の心配のない温かな寝床。
外じゃないから車の音も聞こえてこないしカラスもいない、安心して眠れる寝床。
眠りにつく前、お姉ちゃんとお母さんがゴハンを持ってやってきた。
柔らかそうで良い匂い、一口食べればあまりに美味しく無我夢中で掻き込んだ。
途中でお腹がいっぱいになったけど、今食べなければ次はいつ食べられるか分からない。
だから無理して全部を食べた。
お腹が膨れてはち切れそうで、途端、強い睡魔に襲われた。
何日もまともに眠ってなかったし、歩き疲れていたのもあって、私を撫ぜるお姉ちゃんの手をぺろりと舐めた後……朝までぐっすり、一度も起きる事もなく眠ったの。
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