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シン…………
静まり返った部屋の中、……外とは違う、外ならいつも何かしらの音があるのに何もない。
こんな事も初めてだ。
あまりに静かで不安になって落ち着かないから、私はそっと起き上がり、前足を箱にかけて部屋の中を覗き見る……と。
……ひっく……ひっく……
ひっく……ひっく……
小さな小さな人の子が、しゃくり上げて泣き出した。
そして、バタバタと大きな音を立てながら、私の元までやってくると、
「で、できるよ、……ひっく……ひっく……毎日ごはんの用意もするし、おトイレだって掃除する、……ひっく……病気になったら看病するし、……懐かなくても、引っかかれても……仲良くなれなくても面倒見る、……ひっく……や、約束するから……ぜ、ぜったい……まいにち、ずっと、ずっとずっと面倒みる、だからお願い……パパ、ママ、……そうじゃないと、この仔は死んじゃうよ、ひっく……ひっく…………うわぁぁぁん!」
目から涙をボタボタ垂らして、私を抱き上げ、隠すように、守るようにしゃがんだの____
____ああ、あの日の事は今でもはっきり覚えてる。
オカアニャンとも兄弟達ともはぐれてしまった孤独の中で、抱きしめられた温もりが私を溶かしてしまいそうだった。
それくらい温かくて……すごく、すごく、安心できたのよ。
……
…………
………………
……………………
『これが、…………私とお姉ちゃんの出逢いだったの、』
他の仔達を起こさぬように、小さな声で私が言うと、
『……小雪さんの主さんは優しい人だったのね……それにとっても勇気があるわ。人の子とは言え、幼子がたった一人でカラスに向かっていくなんて……怖かったでしょうに』
サンはカラスが怖いのか、耳を倒して身震いしている。
『そうね、後から言ってたわ。あの時は無我夢中だったけど、もう二度とカラスに近づきたくないって』
『でしょうねぇ。私も野良の出身だから、カラスには怖い思い出しかないもの。気持ちはワカルわ、……それにしても主さんはすごいわね。まさに運命的な出逢いよ。それで、その後はすんなりいったんですか? 主さんのトウとカアが猫を飼うのを反対していたみたいだけど』
『うな、結局はお父さんとお母さんが折れた形ね。お姉ちゃんは当時7才、幼い一人娘が泣きながら一生懸命お願いしてるんだもの。ダメとは言えなくなったみたい。それに、お父さんもお母さんも元々動物好きだったのよ。…………だからね、家族からはすごく大事にしてもらった。美味しいゴハンにたくさんのオモチャ。毎日きちんと世話してくれたし遊んでくれた。本当、……大事に大事にしてもらったわ』
そう、……人と猫で種族は違えど、まるで私を末娘のように扱ってくれた。
たくさんの愛情を注いでくれたの。
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