第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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◆ 夜が明けて翌日早朝____ 私とサン、オトナ猫ズの昨日の晩は夜更かしだった。 ほかの子達がスヨスヨ眠る傍らで、たくさん話をしていたから。 後半、サンは泣いてしまった。 大きな霊体(からだ)を床に伏せ、耳はペタンとイカミミで、ボロボロボロボロ涙を溢して私にぴったり寄り添った。 そして、こんな事まで言い出したのよ。 『小雪さん、今日はこの後、明るくなったら(ぬし)さんに会いに行くんでしょう? わ、私も着いて行くわ。もちろんジャマはしない、近くにいるだけ。だってなんだか心配なのよ。だ、大丈夫、虹の国には内緒で行くから。きっとなんとかなるはずよ』 私はそれを聞いた時、真面目なサンらしからぬ発言に驚いたのよ。 通常、虹の国の動物達は、単独で黄泉の国には入れない決まりになってる。 入って良いのは飼い主さんと一緒の時か、特別に許可が下りてる場合だけ(私はこのパターン。だいぶ前に現世祓い屋、”おくりび” の専属猫又登録をしてるから行き来は自由)。★ なぜ飼い主さんと一緒でないとダメなのか。 その理由は至極単純。 お迎えが来る前に、単独で黄泉をウロウロしていたら、にゃっという間に誰かしらに保護をされてしまうから。 ____やだ! この子ボッチなの!? ____飼い主さんはどうしたのかしら…… ____近くに誰もいないみたい……心配ねぇ、 ____いいわ、こうなったらウチに連れて帰りましょう、 ____おまえは今日から私の子よ! と、黄泉の国には善人しかいないから、どうしたってこうなるの。 保護をしてしまえば、一緒に暮らせば、猫であろうと犬であろうと大事な愛しい家族になる、出会う前には戻れなくなる。 それなのに、忘れた頃に本来の(ぬし)さんが迎えに来たらどうなるか。 これも答えは至極簡単、そう……ド修羅場にゃ。 ”返してください!”、泣きながら叫ぶ飼い主、それに対して ”ぜったいイヤです!”、毛玉を抱えて泣き逃げる保護者。 ドッチも悪くない、だけどドッチも譲れない……そんな悲劇を招かないよう、お迎え控えた虹の国の動物達は、単独で黄泉の国へは行ってはならぬと決まり事がつくられたのだ。
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