第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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そんな訳で、サンは黄泉には入れない。 サンもそれは分かっているハズ、それでも私に着いてくると言ったのよ。 ”岡村家のカア代行”、性格は至って真面目で犬寄りなのに。 ルール違反も承知の上でのこの発言は、……うな、私を心配してるんだわ。 お姉ちゃんに会いに行っても、私の事を覚えてないから悲しい思いをするかもしれない。 そうなった時、イチニャンポッチでいるのは辛いと考えたのだと思うのよ。 『サン、心配してくれてありがとう。でも、サンは虹で待っていて。大丈夫、不安はないわ。だって私はイチニャンじゃないもの。虹にはサンもみんなもいるし、現世に戻れば英海(ひでみ)もトウもカアもきなこもいる。家族がいるからなにがあってもへっちゃらよ』 泣き出しそうなサンのオデコをザリザリ舐めると、サンもサンで私のほっぺをザリザリ舐めた。 私達はしばらくそうしてザリザリし合って匂いを嗅いで、そして。 『じゃあ、行ってくる。それと……おはぎ達はよく寝てるからこのまま行くわ。終わったら、また(ここ)に帰ってくるから、』 ドアを開けて私が言うと、サンはコクッと頷いて、 『分かったわ……気を付けていってらっしゃい、…………あの、小雪さん! 大丈夫だと思うけど……もしも途中で気が変わったり、少しでも辛いと思ったら、すぐに呼んでください。その時は飛んで行きます。私、こ、小雪姉さんを迎えに行くわ』 ほんのちょっぴり毛を逆立てて、恥ずかしそうにそう言ったのよ。 うな……ありがとね。 サンは優しい、私の大事な友猫であり自慢の妹。 だいじょうぶ、あなたがいれば、家族がいれば勇気百倍。 なにもこわくないわ。 ★大福が ”株式会社おくりび” の専属猫又として登録する件について話をしているのがこの辺りです(『霊媒師募集』本編に飛びます) https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=486&preview=1
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