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____静かな場所に行きたいのなら光道に来たら良いわ、
そう言って白雪は、私を軽々肩に担ぐと大きなビルに入っていった。
そして、エレベーターの横を過ぎ、迷う事なく階段を駆け上がる。
さすが、常日頃から霊体を鍛えているだけあるわ。
ゴージャスボディの私を抱えて(7キロ弱)階段のぼり。
なかなかどうしてハードなはずが、息一つ乱れていない。
大したものね、なんだか誠を思い出す。
隙あらば、あの子もしょっちゅう鍛えているもの。
タッタッタッタッ!
それにしても……長いわね。
いつまで経っても止まらない、延々と上がり続けてるんだけど。
『ねぇ、白雪。何階まで行くつもりなの?』
何階だって私は抱っこで楽ちんだけど、なんとなく聞いてみたのよ。
すると白雪は、
『ん? このビルの最上階、200階までのぼるわ! そのフロアには私の部屋、”長室” があるの、そこでゆっくりお話ししましょ!』
そう言って私に笑顔を向けたんだけど……ちょ、200階ってウソでしょう?
死者は霊体、生身の身体を持たないとは言え、まったく疲れない訳ではないはず。
まったく、ここまでくるとあっぱれね。
大したものだわ。
……
…………
………………
『さぁ、入って! 今お茶を用意するわ! あ、大福ちゃんは猫だから白湯の方がいいかしら?』
言いながら、ガキン! と野太い音をさせ、指を鳴らしたその直後、ホカホカと湯気の立つ白湯と紅茶が構築された。
白雪は私の白湯をふーふーと冷ましてる。
本当にこの子は優しくて、面倒視が良いのよね。
『ありがとう、白湯は大好きよ。それと、長室に連れてきてくれたのも嬉しいわ。この部屋におじゃまするのは初めてね。春に来た時は平蔵と一緒に彰司の家に泊まっていたし』
フカフカソファを勧められ、私は飛び乗り白湯を一舐めいただいた。
ちょうど良い温度だし、それになんだかとっても美味しい。
ニコニコ笑う白雪は、テーブルを挟んだ向かいのソファに腰かけた。
そして紅茶を綺麗な所作で一口飲んでこう言った。
『そうだったわねぇ。ここで良ければいつでも遊びに来てちょうだい。それで、今日はなにかの用事? 平蔵さんは一緒じゃないの?』
私は首を横に振り、平蔵はいない、イチニャンきりな事を説明する。
『平蔵は一緒じゃないわ。今日は私だけで来たの。白雪と朋美に教えてもらった惑星単位の瞬間移動、それをつかってね』
『わぁ! すごいじゃない! いつ来たの? もしかしてさっき着いたばかりとか?』
『ううん、着いたのは昨日よ。でも、昨日は虹の家族の所に行っていたから、黄泉に来たのは今朝なのよ。今日はね、黄泉の国に霊を探しに来たの』
『霊? 誰を探しに来たのか、私が聞いても大丈夫? ダメなら無理には聞かない。でも、もしも私に出来る事があれば、それは遠慮なく言ってほしいわ』
この子のこういう所、……優しくて気遣いが細やかで、決して押し付けたりしない。
猫ってね、こういうヒトが好きなのよ。
『ううん、ううん、白雪なら構わないわ。私、……家族を探しに来たの。生きていた頃、一緒に暮らした飼い主の女性よ』
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