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瀧澤社長の一件から数か月の時が過ぎた。
あの後、アフターフォローで1回電話を入れたけど、あいにくその日は社長が不在で、伊藤さんの話は聞けなかった(代わりに出た事務員さんに電話機は絶好調だとは聞けた!)。
その後も、何度か電話を掛けたり掛かってきたりしてたんだけど、すれ違いが続いた。
そうこうしてるうちに日々の忙しさに流されて、瀧澤社長の事も、伊藤さんの事も頭の隅に追いやられていったんだ。
とにかく毎日 ”貴重なご意見ご要望” を謹聴し続けていたのだけれど、それは突然終わりを告げた。
謹聴したくても出来ない状況……そう、会社がいきなり倒産してしまったのだ。
呆気ないものだった。
昨日までは会社員、なのに今日から無職になって、一人暮らしのこの僕は、家賃やら生活費を貯金を崩して細々繋ぎ、再就職に必死になったんだ。
内定がもらえないまま、受けた会社は二桁越え。
そんな時、倒産の噂を聞いた瀧澤社長から連絡があった。
瀧澤建設で職人枠なら採用出来る、ウチに来ないかと声を掛けてくれたのだ。
ありがたいなと思った、涙が出た、だけどそれは丁重にお断りをした。
だって、誕生日を迎え30才になった僕が、今から技術勝負、体力勝負、そして畑違いすぎる職人としてやっていけるか、それは……否だ。
ご厚意に甘えたい、無職から脱出したい、そう思うけど、それで結果多大なる迷惑をかける事になったら。
そんなの絶対やだ。
僕は社長が好きなんだ、好きだからこそここは甘えちゃいけないの。
なもんで。
僕は今日もハローワークに通うのだ。
家賃の為、食費の為、そしてなにより自分に合った職探しの為。
出来る事なら誰かの役に立つような……そんな仕事が見つかるといいなぁ。
願わくば、良いご縁がありますよーに!
僕、ファイッ!!
霊媒師こぼれ話 岡村英海__了
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