第一章 霊媒師こぼれ話_岡村英海

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◆ 瀧澤社長の一件から数か月の時が過ぎた。 あの後、アフターフォローで1回電話を入れたけど、あいにくその日は社長が不在で、伊藤さんの話は聞けなかった(代わりに出た事務員さんに電話機は絶好調だとは聞けた!)。 その後も、何度か電話を掛けたり掛かってきたりしてたんだけど、すれ違いが続いた。 そうこうしてるうちに日々の忙しさに流されて、瀧澤社長の事も、伊藤さんの事も頭の隅に追いやられていったんだ。 とにかく毎日 ”貴重なご意見ご要望” を謹聴し続けていたのだけれど、それは突然終わりを告げた。 謹聴したくても出来ない状況……そう、会社がいきなり倒産してしまったのだ。 呆気ないものだった。 昨日までは会社員、なのに今日から無職になって、一人暮らしのこの僕は、家賃やら生活費を貯金を崩して細々繋ぎ、再就職に必死になったんだ。 内定がもらえないまま、受けた会社は二桁越え。 そんな時、倒産の噂を聞いた瀧澤社長から連絡があった。 瀧澤建設で職人枠なら採用出来る、ウチに来ないかと声を掛けてくれたのだ。 ありがたいなと思った、涙が出た、だけどそれは丁重にお断りをした。 だって、誕生日を迎え30才になった僕が、今から技術勝負、体力勝負、そして畑違いすぎる職人としてやっていけるか、それは……否だ。 ご厚意に甘えたい、無職から脱出したい、そう思うけど、それで結果多大なる迷惑をかける事になったら。 そんなの絶対やだ。 僕は社長が好きなんだ、好きだからこそここは甘えちゃいけないの。 なもんで。 僕は今日もハローワークに通うのだ。 家賃の為、食費の為、そしてなにより自分に合った職探しの為。 出来る事なら誰かの役に立つような……そんな仕事が見つかるといいなぁ。 願わくば、良いご縁がありますよーに! 僕、ファイッ!! 霊媒師こぼれ話 岡村英海(ひでみ)__了
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