第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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話を聞いて納得した、……と同時、落胆もした。 私はね、覚悟を持って黄泉の国に来たけれど、心のどこか奥底で薄い期待を抱いてたのよ。 黄泉の国に移り住んで数か月……その間、国が誇るリカバー機能が彼女の記憶を復元させているのでは……会いに行ったらもしかして、 ____小雪、小雪ごめんね、忘れてごめんね、 ____お姉ちゃん、ちゃんと思い出したよ、 そう言って抱きしめてもらえるかもと、……可能性は低いけど、少しだけ、ほんの少し考えてしまったの。 でも……今の話を聞いて、可能性はゼロなのだと思い知る。 『大福ちゃん……大丈夫?』 黙った私に白雪が、心配そうな顔をした。 ああ、いけない。 この子は私に親切で、とても優しくしてくれるのに、うな……こんな表情(かお)をさせてしまった。 大丈夫、確かに少しは期待したけど、でも、ダイジョウブ。 『ええ、問題ないわ、ただ少し驚いただけ。黄泉のオートリカバーは大したものね。そこまで考えて造られているのだから。……そうよ、下手に記憶に干渉して、なにかあったら大変だもの。正しい対処だと思う。……さて、私はそろそろお姉ちゃんを探すとするわ。白雪、悪いのだけど、このまま部屋にいさせてくれる? ここなら静かで落ち着いて霊視が出来る、』 なるべく暗くならないように、私は努めて明るく言った。 白雪は、そんな私の心を読んだか、おんなじように明るく笑い、 『もちろんよ! 好きなだけいてちょうだい。(ぬし)さんを探す手段は霊視? それが出来るなら一番良い。黄泉の国は広すぎるもの。足を使って探してたんじゃあ早くても50年はかかりそう。とは言っても……霊視でも大変そうだわ。ある程度の目星をつけて視ていかないと、闇雲に探すんじゃダメよ。さあて、どうしようかしら。とりあえず、黄泉のマップを出すわね』 言いながら、指を宙でタップして大きなマップを展開させた、……のだが。 それを視た時、私は言葉を失った。 にゃんでかって理由は簡単。 黄泉の国、広いどころの騒ぎじゃない。 宙に浮かぶ大きなマップは数枚あって、地上マップ、地底マップ、海中マップ、天空マップ、異空間マップ……と、他にもまだまだエリアごとに描き分けられて、しかも、どのエリアもあり得ないほど広いのよ。 ちょっと待って、聞いてないわよ、なんなのこれは。 広いとは思っていたけど、ここまでとは想定外にゃーっ!
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