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◆
『白雪さんも大ちゃんも。さぁ どうぞ、散らかっていますけど上がってください』
連絡の一つも入れずに突然やって来たというのに、彰司は笑顔で迎えてくれた。
通されたのは明るい和室で、木目の座卓にフカフカ座布団。
床の間には百色華の一輪挿しが飾ってあって、時間で色を変えている。
座卓を挟んだ向こうに彰司、こちら側には私と白雪、それぞれ座ったそのすぐ後。
着物姿の佐知子が部屋に、お盆を持ってやってきた。
そして、はにかむように微笑みながら、
『白雪さん、大ちゃん、ようこそいらっしゃいませ。来てくださって嬉しいです』
白雪には緑茶、私には白湯を出してくれたのよ。
佐知子と会うのはこれで2回目、……なんだけど、私が白湯が好きだって事、覚えていてくれたのね……私の方こそ嬉しいわ。
お茶と一緒に出されたお菓子はパウンドケーキ。
聞けば佐知子の手作りで、畑で採れたさつま芋が入ってるの。
一口食べれば甘くてほっぺが落ちちゃいそう。
普段は英海がうるさく言うから、こういう物はめったな事では食べられない。
____人間の食べ物は猫には味が濃いんだよ、
____だからお姫は食べちゃダメなの、
そりゃあね、生きた猫なら注意をしなくちゃいけないけれど、命を持たない猫又だったら何を食べてもダイジョブなのに、心配性にも程がある。
ま、それで英海が安心するならガマンするけど、でも、いない時には食べちゃうもんね。(うまいにゃー!)
……
…………
………………
美味しいお菓子とお茶を飲みつつ(私は白湯)、
『突然来ちゃってごめんなさい!』←白雪
『ぜんぜん、いつでも大歓迎です』←彰司
『今日は泊まっていかれませんか?』←佐知子
『ケーキうまいにゃー!』←私
しばらくそうして、他愛のないお喋りをした後に本題に移ったの。
最初に言ったのは白雪だった。
『それでね、今日来たのは彰司くんにお願い事があるからなのよ、』
『願い事?』
そう言って、彰司は首を傾げてる。
芋のケーキは3つ目で、モグモグ咀嚼が止まらない。
そんな彰司に白雪は、コクッと頷き4つ目の芋のケーキに手を伸ばす。
私も私で残り少ないケーキに焦り、まだ食べている途中だけれど、2つ目のケーキを引き寄せ確保した。
その様子をそばで視ていた佐知子はというと、
『売れてます、売れてます……! 私の作ったケーキ、売れ行き好調です!』
と、頬を赤らめ、それはそれは嬉しそう。
そんにゃこんにゃでケーキも完売。
美味しかったと大満足し、そして……
『彰司、さっき白雪が言った願い事なんだけど、実はね霊を探してほしいのよ。私の妖力じゃ手に負えなくて、彰司なら探せるんじゃないかと思ったの。それで、捜索範囲は黄泉の国全域なんだけど、……やっぱり広すぎるかしらね』
自分のお願い事だから、私の口で頼んだの。
どうかしら、イケそうかしら、さすがの彰司も黄泉全域は無理かしら……とドキドキしながら待ってると、
『黄泉の国で霊探し? なんだ、そんな事かぁ。もちろん良いよ。大ちゃんと白雪さんのお願いだもの。お安い御用だ』
いとも簡単にそう言ってのけたのにゃ!
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