第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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長い手指を組んで絡めて離して組んで。 手慣れた様子が視ていてなんだか安心する、彰司ならやってくれると思わせる。 私と佐知子と白雪は、彰司から少し離れた所に立って、印を組むのを黙って眺め続けてた。 それから少しして。 手指の動きがピタリと止まり、彰司はそれをほどく事無くそのまま口に持ってきた。 ここからでは聞こえないけど、口の中で小さくなにかを呟いて、祈るように目を閉じた……その瞬間____ ____ドクンッ!! 大地が大きく脈を打った気がしたの。 今のは一体……訳が分からず胸がドキドキいいだして、霊体(からだ)の毛がボワッとブワッと逆立った、……が、両隣のヒトの子達は至って平静。 何事も無かったように彰司を視ている。 だから私もンベンベと高速で毛繕いして気を落ち着かせ、二霊(ふたり)にならってそのまま前を視続けたのよ。 大地が鳴った数十秒後。 彰司と、彰司のまわりが真珠の色に発光しだした。 空からの、恵みの光のそれより明るく輝いて、野草も野花も輪郭が光に飛ばされ消えていく。 同時、金色の光の粒子が雪のように宙を舞い……うな……なんと綺麗で幻想的な光景だろう。 ただ、猫の目にはちょっと明るすぎだけど。 シパシパ薄目でなんとか前を視ていると、彰司が軽く草を踏み、サクッと小さな音がした____ ____その直後、 ゴウッ!! 立ってる彰司を中心に、円を描いたドーナツ状の大地から、数えきれない光の帯が地から天へと伸びたのよ。 それらはもれなく四方八方、帯のすべてにまるで意思があるように、迷う事なく果ての果てまで勢いをつけ飛んでいく。 彰司は円の真ん中で、結わいた髪を風にまかせて立っていた。 時折目を細め、 時折なにかを呟き、 時折空を視上げ、 時折大地を視つめ、 時折耳を澄ませた、 その様子は実に優雅で穏やかだった。 なにも知らない誰かが視たら、まさか今、霊視で(ひと)を探しているなど思いもしない事だろう。 …… ………… ……………… どのくらい時間が経ったか分からないけど、決して長いものではなかった。 目線の先の光の中で、ふと、彰司がこちらを向いた。 そして、 『大ちゃん、お姉さんを視つけたよ』 眉を下げ優しく笑い、静かな声でそう言ったのだ。
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