第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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◆ 彰司と佐知子と白雪と。 三霊(さんにん)のヒトの子達にお礼を言って、草の大地を蹴り上げた。 走って向かうは藁ぶき屋根の、彰司の家の裏手にまわった勝手口。 ああ、気持ちが急いて転びそうだわ。 それでもなんとか走りに走って到着すると、そこにはポツンと ”移動の陣” が、草に紛れてソーダの光を放っていたの。 『あった! これね、』 この陣は佐知子専用。 瞬間移動が出来ない妻が(普通の(ひと)は出来なくて当たり前だけど)、どこかに一霊(ひとり)で出かける時に使えるよう、特別に、彰司が設置したものらしい。 彰司はさっき、 ____大ちゃん、お姉さんを視つけたよ と、こう言った。 そして続けてこうとも言った。 ____お姉さんの住む街は、ミセレイニアス(ココ)からうんと離れた場所だ、 ____歩いて行くには遠すぎる、 ____かと言って、大ちゃんが知らない場所では瞬間移動が使えない、★ ____だから、ウチにある移動の陣を使えば良いよ、 ____陣に乗ったその上で、街の名前を呟くだけで移動が出来る、 ____名前は、その街の名は………… 『陣よ! 私を今すぐ ”プレサスメリル” に連れてって!』 陣に飛び乗り私はすぐに、教えてもらった街の名前を大きな声で叫んだの。 知らない街、お姉ちゃんが住んでる街、……そこに行けば会えるんだ、お姉ちゃんに、大好きなお姉ちゃんに……! ソーダみたいな青みがかった緑色。 強まる光に霊体(からだ)が包まれ、猫の目にはウルサくてたまらない。 眩い光に目を細め、堪えきれずにシパシパ瞬き、……1回目はただただ眩し、2回目は少し収まりかけてきて、3回目が終わった時は視える景色がガラリと変わった。 …… ………… そこは、街というより村のような場所だった。 ミセレイニアスにあるような、ノッポなビルはどこにもない。 背の低い民家のような建物が、ポツリポツリとまばらにあって、とてものどかで、どこか無性に懐かしい……そんな所だった。 『…………うな……着いたにゃ……ここが……”プレサスメリル” ……』 ここに、お姉ちゃんがいるんだ。 ★瞬間移動のスキルについて書いてあるシーンがこのあたりです。 このスキルの話が出たのが数年前なので、念の為にリンクを貼りつけました。 『霊媒師募集』本編に飛びます。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=625&preview=1
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