第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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ソーダの光がシュワシュワしている、”移動の陣” から足を一歩踏み出した。 そしてそのまま二歩三歩、四歩五歩と六歩を数えて立ち止まる。 その時、ふと息苦しさを感じた……が、なんて事はない。 この街の、いや、この村のどこかにお姉ちゃんがいる……そう思ったら嬉しくて、それと同時、嬉しさ以上に緊張しちゃって、ただ単に、息をするのを忘れていただけ。 ああ、これじゃあダメね、落ち着かなくちゃ。 そう考えて大きく大きく息を吸う。 吸って、吐いて、吸って、吐いて、また吸ったらまた吐くの。 そうしているうち、幾分気持ちが平らになった。 平らになれば、まわりを視る余裕も出てくる。 改めて顔をあげれば、まばらに建ってる民家らしきと広がる水田。 植えたばかりか小さな稲が、等間隔で風にそよそよ揺れていた。 『……キレイな所ね……田んぼ以外はなんにもない……昔、生きていた頃。お姉ちゃんと住んでた場所に少し似ている。もっとも……ここよりは、もう少し色々あったけど(スーパーとかコンビニとか)』 ココに着いた時。 どこか無性に懐かしく感じたのは、そういう理由があったのだろう。 お姉ちゃんも、同じように感じたのだろうか? だから、華やかなミセレイニアスではなく、プレサスメリルに住んでいるのかもしれない。 それにしても……民家、少ないわね。 プレサスメリルがどのくらいの広さなのかは分からないけど、全域を探すにしたって、これならきっとすぐに視つかる。 なんなら、この範囲なら霊視でだって楽勝よ。 楽勝……そうね、楽勝だけど、やっぱり歩いて探しましょう。 だってホラ、ココロの準備やなんにゃらかんにゃら色々あるでしょ? べ、べつに怖気づいてるワケじゃにゃいけど、デモデモダッテ……ゴニョゴニョ。 そう、アレよアレ、久しぶりだし手土産がいるかと思って。 土産と言ったらバッタが定番(猫界ではジョーシキ)。 でも、お姉ちゃんは虫が苦手で泣いちゃうから、無難にお花がいいかもしれない。 そんなコトを考えながら、テチテチ道を歩いていると。 少し先の田園で、作業をしている住人らしきを視つけたの。 イチニイサンシイ……全部で5霊。 頭にハチマキ、真白な霊体(からだ)に泥が跳ねても、気にする事無く水田に足を沈ませ田植えに励む。 作業しながらみんなで仲良く、歌を歌って楽しそう。
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