第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

40/80
前へ
/370ページ
次へ
____心当りが全然ない、 ああ……そうか、 やっぱり……そうか、 分かってる、分かってた、 ただちょっと、僅かな希望に縋っただけ、 ただちょっと、もしかしたらと思っただけ、 だからぜんぜんだいじょうぶ、 お姉ちゃんが私を忘れてしまっても、 私はずっと忘れないもの、 両目を閉じれば遠い昔を思い出す、 ”小雪” だった私を抱いてニコニコ笑うお姉ちゃん、 私達は仲良しだった、 その過去はなにがあっても変わらない、 ダイジョブニャ、ダイジョブニャ、 久しぶりに元気な顔が視れたんだもの、 それだけで充分だ、 『…………本当に、充分だわ』 誰に聞かすでないけれど、私は小さく呟いた。 もう帰ろう、会わずに帰ろう。 サンのところに、英海(ひでみ)のところに帰るんだ。 私は最後に、おしろい花の陰に隠れてお姉ちゃんを視上げたの。 テンポの速いハッカチョ族と楽しそうにお喋りしてる。 笑いながら言葉を投げ合い、ラリーは延々続いてるのよ。 どうやら心配なさそうね。 お姉ちゃんが生きてた頃の最後の方は、認知症だったと聞いている。 今の様子を視てみれば、そんな様子は欠片もない。 それはおそらく黄泉(こっち)に来てから完治したんだ。 黄泉が誇る ”オートリカバー”。 死者の霊体(からだ)に不調があっても、これによって健康体に修復可能。 記憶なんて二の次でかまわない。 認知症が治ったのならそれで良い。 729adcb3-772b-4d48-b743-07ae4d8b9350 ★大福が小雪だった頃。 妖力(ちから)もない、尻尾もたった1本だった頃です。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

473人が本棚に入れています
本棚に追加