第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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私は胸が痛くって、否定も肯定も出来ないでいた。 ハムとは確かに友達だけど、今日はアナタに会いに来たのよ。 遠い遠い現世から、勇気を出して、途中で何度も潰れそうになりながら、それでも遥々アナタに会いに黄泉(ここ)まで来たんだ。 『言われてみれば……大福ちゃんを視た事があるような気がする。いつだったかしら……ウチの小雪のお友達なら……虹の国?』 そうね、確かに虹でも会ってるわ。 アナタは私の横を駆け抜け、ハムの小雪を抱きしめた。 『その真っ白な毛皮も視た事がある、でも分からない…………ウチの小雪とおんなじだから、それと混合してるのかしら、』 雪のように真っ白だから ”小雪”。 なのにアナタは同じ白でも私の事は忘れてしまった。 『それから尻尾……大福ちゃんは3本あるのね。という事は、大福ちゃんの飼い主さんは、抜けたヒゲを集めたんだ』 あ……覚えてる、昔アナタは言っていた。 ”ねぇ小雪、今日良い事を聞いちゃったんだ! 猫の抜けたヒゲを千本集めると、尻尾1本と交換してもらえるんだって! さっそく今日から小雪のヒゲを集めなくっちゃ! 尻尾を増やして猫又にするの。そしたら小雪は死なないもの、ずっと一緒にいれるのよ” そんなの迷信、アナタだって分かっていたはずなのに、それでもずっと集めてた。 私のヒゲを見つけるたびに、キレイな箱にしまってたっけ。 『尻尾は最初に1本あるから、もう2本増やすなら二千本必要だわ。飼い主さんは大変だったでしょうねぇ。私も昔集めてたけど、千本ちょっとしか集まらなくて、………………あれ? 私……なにを言ってるのかしら。生きてた頃、私が一緒に暮らしていたのはハムスター、猫は飼った事がなかったはず……』
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