第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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後ろからはお姉ちゃんの叫ぶ声。 『大福ちゃん! どこ行くの!?』 ああ、”サヨナラ” も言えてない。 今度こそ二度と会えなくなるというのに、最後にこんな別れ方……私、ここまで来たのになにしてるんだろ。 そうは言ってももう止まれない。 走って走って、お姉ちゃんから視えないとこまで走ったら、そこで泣くんだ。 誰にも知られずイチニャンだけで、気が済むまで泣いて泣いて泣きつくしたら、そしたら帰ろう。 サンのところに、英海(ひでみ)のところに。 走り続ける視界には、ハッカチョ族が目印代わりに撒いたお米が道なりにキラキラしている。 なるべくそれを踏まないように走っていると、頭上からなにやら音が聞こえてきたの。 バッサバッサ! バサバサバサバサッ! うな、なんの音? 気になって、走る速度を気持ち落ちして上を視る…………と、 『チョットー! いきなりどうしたのよーっ! ピピー!』 『急に走ってドコ行くの!? ピョー!』 『急用? 急用を思い出したの!? ピピピッ』 『ココは黄泉よ? そんなに急いでどーすんのー! ピョー!』 『優子ちゃんも心配してるわ! ピーッ!』 う、うなっ!? なにアレーーー!? 予想外の空からの追跡者! 大きな羽をバサバサさせてハッカチョ族が迫って来てる!! ちょ!! 怖ーーーっ!!  鳥が良い(・・・・)のはワカルけど、おせっかいにも程があるっ! 確かに事情は話してないけど空気を読んで!  ココは黙って行かせてよーっ! 青白い、月夜を背にするハッカチョ族は(正確には月じゃないけど、似た星だけど)、逆光で、羽ばたく姿は影となってホラーチックなビジュアルだ(怖っ!)。 それでなくても昼間の田植えで泥んこだから真っ黒けっけで羽もゴワゴワ。 そんなのが集団で、私めがけて今急降下!  着地と同時に囲まれて、バッサバッサともみくちゃにされてるの! 『ちょ! ぶはっ! ちょちょ、ちょーーー! お、落ち着いて! うな! だから、羽! 羽を一回畳んでちょーだーい!!』 抵抗虚しくやられ放題。 話を聞かないハッカチョ族は、『どこいくの?』『もっとゆっくりしてきなさいよ!』『なんならウチに泊まっていけ!』と大騒ぎ。 せっかちにも程がある、私の返事を聞く前に、話がどんどん横道逸れてる。 どうしよう……鳥の子くらい蹴散らす事は出来るけど、悪い鳥じゃあないもんだから、乱暴な事はしたくない。
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