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『小雪、ちょっと待っててね、』
カーテンを閉めたあと、お姉ちゃんは私に振り向きそう言った。
そして今度はハムの子に、
『小雪……ああ、寝ちゃったか……しょうがない、このまま寝床に寝かせよう』
囁くようにそう言って、……お手製だろうか?
竹で組んだ立派なケージにハムの小雪を寝かせたの。
寝床には柔らかそうな藁が敷き詰められている。
それだけじゃない。
竹で出来た回し車と滑り台、あと、キレイなお水もちゃんとあるんだ。
私はそれを横目で視ながら、ベッドの上でお姉ちゃんが来るのを待った。
彼女はササッとパジャマに着替え、髪をとかしてお化粧水をつけようとした。
けれどそれを途中で止めて、私の隣に寝転んだ。
『あぶないあぶない、うっかり化粧水をつけるトコだった。小雪は昔、私が化粧水とかクリームをつけるたんびに舐めに来たからねぇ。食べ物じゃないし、そんなの舐めたら霊体に悪いし、だから小雪が生きていた頃は、夜に化粧水は使わなかった。おかげで夏でもカサカサだったよ。でも良いんだ。カサカサするより小雪になにかある方が大変だもの。…………小雪、ごめんね。あんたの事、忘れててごめんね。会いに来てくれてありがとね、私、……私、』
ゴロンと横向き、お姉ちゃんは赤い目をして私を視つめてそう言った。
うな……そうだったわね。
お姉ちゃんが顔になにかをつけるたび、どうしてわざわざそんな物をつけるのかが不思議だった。
ヘンな物をつけている、私がキレイにしてあげないと、……そう思って一生懸命舐めたのよ。
今となっては化粧水の意味も分かるし、そんな事はしないけど、でも。
私は霊体をモゾモゾさせて、お姉ちゃんににじり寄る。
顔が目の前、息がかかるくらいの近さだ。
目が合って、お互いシパシパ瞬きをして、そのまま私は首を伸ばしてほっぺを舐めた。
化粧水はついてないけど、ほっぺも鼻もザリザリと。
お姉ちゃんは『ヒリヒリするよ』と泣き笑い、私をぎゅっと抱きしめた。
この日の夜は朝までずっと、抱き合い寄り添いぐっすり眠りについたんだ。
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