第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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◆ お姉ちゃんとグッスリ眠った次の朝。 この日は早起きだった。 昨日の夜の、お母さんの宣言通りピクニックに行くためだ。 お母さんは張り切って、たくさんのお弁当を作ってくれた。 もちろんそれはヒトの子用と猫用とハムの子用。 三段重ねのお弁当箱と水筒と、小さなゴムのボールを持って、お姉ちゃんとお母さんとお父さん、それと、ハムと私も全員揃って家を出たの。 外に出ると快晴だった。 広がる田んぼは稲穂が緑に輝いて、あぜ道には細かな砂利と茶色い砂が入り混じる。 その道をみんなで並んでしばらく歩けば、……うなっ! ココは昨日の原っぱじゃない! 待ち合わせのハッカチョ族を待ってた時に視つけた場所よ! 今日も今日とて野草はフカフカ、風はソヨソヨ、日差しは優しくポカポカだ。 目を閉じると、湿った土と草の匂い……それとお花の蜜の匂い。 『さぁ、着いたわー! ここでみんなでのんびりしましょう!』 お母さんがそう言うと、お父さんが指を鳴らして大きなレジャーシートを出現させた。 それをパパッと野草の上に敷いたあと、 『みんな集合、まずはお茶で一服だ』 と優しい顔で手招きをする。 お姉ちゃんを視上げると、ニコッと笑って私を抱き上げこう言った。 『嬉しいなぁ、小雪と一緒に外で遊べるなんて夢みたい。現世と違ってここは車も通らないからね。安心して遊べるよ。あ、でも、だからと言ってイチニャンだけで遠くに行っちゃダメよ。迷子になったら大変。……本当にダメだからね、もう二度と離れたくないもの』 お姉ちゃん……私はこの時、言葉が詰まってなにも言う事が出来なかった。 詰まった理由はいくつか、そんな風に言ってもらえて嬉しかったのと、……あとの1つは____ …… ………… レジャーシートに家族が全員座ったところで、お母さんが指を鳴らして紙コップを出現させた。 ヒトの子達は冷たいお茶を、私とハムには常温のお水を、それぞれに行き渡ったら、そのままユルくお喋りが始まった。
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