第二章 霊媒師こぼれ話_持丸平蔵と清水誠ー1

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◆ 『どなたかーーー! 私の姿が視える方はいませんかーーーー? 私はココにいますよーーー! 持丸平蔵、78才! 好きな食べ物は芋饅頭ぅ♪ 霊媒師やってまーーす! どーなーたーかー! おーいおーい! ……あら残念、どうやら(ココ)にはいないみたいですねぇ」 朝の通勤時間帯、T駅のホームはこんなに生者が溢れているのに。 私の姿が視える人が誰もいないなんてねぇ。 あぁん、つまらない! 仕方がない、駅はまた明日改めて来ましょう。 この後は、どこか別の場所に行ってみようかしら。 なるべく人がたくさん集まりそうなトコロが良いのですが、今日は平日、映画館とか遊園地とかでは人も少なそう。 平日でもたくさん人が集まる所と言えば……スーパーマーケット!  んー、だけど混むのは夕方ですよねぇ、朝の時間じゃ期待できそうにありません。 どこかの会社に潜り込むのもアリですが……そこで視える人を視つけても「もうココで働いていますから」なんて言われそう。 私はウチの会社で働いてくれる霊力者、ダイヤの原石を発掘したいの。 視つけるだけじゃダメなのよ。 そうなると……んーんー………………ハッ!(ピコーン!) ハローワークなんて良いんじゃないかしら! 現在仕事を探してて、なおかつ私の姿が視える生者、そんな人がいれば即スカウト出来るじゃない! やん! 私、朝から冴えてますね! すぐに行ってみましょう! …… ………… まずは地元、T市のハローワークに行きましたが、私を視る事が出来る人はいませんでした……しょんぼりです。 霊力(ちから)を持つ生者、中々視つからないものですねぇ。 困ったものです、あと1人か2人、新たな霊媒師を迎えたいと思っているのに。 とりあえず一休みでもしましょうかね。 トンッと地を蹴りひとっ飛び、街路樹のてっぺんに腰かけましょう。 ふぅ、良い風が吹いています。 高いトコから視下ろせば、うんと遠くに二分咲きの桜の花が、斜め下には行き交う車が、その脇の歩道では急ぎ歩く生者のみなさん。 ああ……私が死んでも世の中はこうして回り続けていくのですねぇ。 思えば良い人生でした。 島根で生まれ、幼い頃から霊力(ちから)を持っていた私は、高校卒業と同時に霊媒師になりました。 そこで10年、ひたすら努力で霊力(ちから)を磨き、貯めたお金で上京したのだけど……自分の会社を作りたい、社長になりたい、なんて、ちゃんとした計画もなく、若さの勢いだけで始めちゃったんです。
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