第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

56/80
前へ
/370ページ
次へ
『小雪が帰って来てくれて本当に嬉しいよ』 そう言ったのはお父さんだ。 生きてた頃から優しい人で、だけど仕事が忙しかった。 帰って来るのはいっつも深夜で大変そうで、私はしょっちゅう玄関までお出迎えに行ってたの。 『私も嬉しい、だって小雪は家族だもの。ウチの大事な可愛い可愛い次女だわ』 これはお母さん。 私が次女? 嬉しい……お母さんにとって私は次女なのね。 それじゃあハムは三女になるの? と思ったら、意外な事に長男だった。 知らなかった……私、ずっとハムは女の子だと思っていたのよ。 『私もすごく嬉しい。これもみんな、小雪が頑張って会いに来てくれたおかげだよ。私はずっと忘れていたのに……小雪が思い出させてくれたの。小雪、こんなダメなお姉ちゃんでごめんね、来てくれてありがとね』 お姉ちゃん……そんなに何度も謝らないで。 終わった事はもう良いの。 アナタは私を思い出してくれたじゃない、それがどんなに幸せか。 『キュッキュッ! チュッチュッ!』 あら珍しい。 今日は小雪もオシャベリなのね。 ハムはゴキゲン、シートの上とみんなの膝をチョロチョロとあっちにこっちに大忙しだわ。 『うなな、うなななな、うな、うななななな……うなっ!』 私もハムのコトは言えないか。 言いたい事がたくさんある、伝えたい気持ちがたくさんある。 あえて人語は使わずに、普通の猫と同じように、それでも気持ちを分かってくれると信じてるから。 それからだいぶ経った後。 家族みんなでお弁当を食べて、ゴムのボールでお姉ちゃんと遊んだの。 ハムは小さくボールは危険で、だから、チビの相手はお父さん。 お母さんは家に飾る花が欲しいと、原っぱに咲く百色華(ひゃくしょくか)を摘んでいた。 それぞれ好きに時間を過ごして、今度はローテーション。 お姉ちゃんがハムの小雪と遊びだし、お父さんはゴロンとお昼寝。 私の相手はお母さんにチェンジした。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加