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ある日の午後の部屋の中。
お姉ちゃんはハムの寝床を整えていた。
私とハムはベッドの上でゴロゴロしながら、そんな様子を眺めていたの。
窓からそそぐ日差しは明るく、そよぐ風はカーテンを揺らしてる。
優しくて平和な時間だ。
お姉ちゃんは作業が終わると立ち上がり、そのまま真っすぐベッドに来ると腰を下ろして私達を撫でたのよ。
『小雪、小雪、今日も楽しいねぇ。お姉ちゃん、あんた達がいてくれて本当に幸せだよ』
囁くような小さな声。
口元は綻んで、目には愛情が溢れている。
お姉ちゃん、お姉ちゃん、私も幸せだよ。
大好きな霊だもの、会いたくて会いたくてたまらなかった霊だもの。
『ずっと一緒にいようね。この家で、お父さんとお母さんと小雪と小雪で仲良く暮らすの。それでいつか、ずっと先の未来になったら、私の子供と孫達もやって来る。そしたらもっと賑やかになるね。楽しみだなぁ』
お姉ちゃんはそう言うと私とハムを抱きしめた。
お姉ちゃんの描く未来に私がいる、……それはとっても嬉しい事のはずなのに、私の胸はズキンと痛んでモヤモヤしたんだ。
頭の中で声が聞こえる、お姉ちゃんと同じくらいに優しい声。
____大福は僕の宝物だ、
____一生大事にするからね、
____生きてる間もその後もずっと、ずーーーっと!
____お姫は僕の天使だね、
____大大大好きー!
毎日毎日飽きもせず、思い出すと笑ってしまう。
英海はとっても優しい子。
イチニャンぽっちで現世に着いた春の日に、あの子が私を視つけてくれた。
生者のクセに私にふれて私を抱きしめ、”僕の部屋で暮らさない?” と連れて帰ってくれたんだ。
あの時、英海の身体が泣きたくなるほど温かくって、その温もりに私の心は救われた。
思えばあの子がお姉ちゃんに会いに逝けと言ったんだ。
自分から言ったのに、視送る時には目と鼻を真っ赤にさせて、
____大福……絶対帰ってきてね、
そう言って私の頭を嗅いでいた。
英海は今頃なにをしているのだろう。
仕事はちゃんとやれているかしら。
あの子は霊力が強いけど、お人好しが過ぎるのよ。
私がいない現場で1人、悪霊にコロッと騙され酷い目にあっていたらどうしよう。
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