第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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英海(ひでみ)の事が気になりながら迎えた次の日。 この日も朝から天気が良くて、お父さんとお母さんは珍しく二霊(ふたり)で街に出かけていった。 お姉ちゃんも一緒に行こうと誘われてたけど、 『私はいいわ。また今度にする。小雪と小雪(こゆ)と一緒にいたいから』 そう言って、残る事になったんだ。 お姉ちゃんはいつもの日課で家の中の掃除をし、ハムの寝床を整えてからお菓子作りを始めたの。 黄泉の国なら指を鳴らせばなんだって手に入る、もちろんお菓子も。 それでもわざわざ手作りで、美味しそうなクッキーを焼き上げた。 『さぁ、今日はこれを持って散歩に行こう。クッキーいーっぱい作っちゃった。この時間ならハッカチョ族のみんなも田んぼにいるだろうし、オヤツにどうぞってするの。みんな喜んでくれるかなぁ』 ニコニコ笑うお姉ちゃんはハムの小雪を肩に乗せ、竹で編んだ大きなカゴにクッキーをワシワシ詰めると私を連れて外に出た。 玄関横にはおしろい花が綺麗に咲いて……あ……それだけじゃないにゃ。 ここに来た日は無かったはずのシロツメクサも咲いている。 これはきっと、あの夜私がお姉ちゃんの土産に持ってきた花だ。 渡せずに地面に落としてそのままにしてたけど、こうして根付いて寄せ植えみたいになっているのがなんだが嬉しい。 お土産、無駄にならなかった。 あぜ道を並んで歩いてしばらく行くと、遠くの方から元気な声が聞こえてきた。 『チョットー! 私の足を踏まないでちょうだい! ピピー!』 『あらやだ失礼! 私の足がスラッと長いばっかりに! ピョー!』 『ピャハハハ! 今の、今週で一番面白い冗談だわぁ! ピピピッ』 『”今週” じゃなくて今月で一番よぉ! ピピピー!』 『”面白いで賞” をあげるわ! 景品はお米ぇ! ピーッ!』 あ、相変わらず賑やかね。 私とお姉ちゃんは思わず顔を視合わせた。 そしてプッと同時に吹き出し、散々笑って落ち着いてから彼らの元に歩いて行ったの。 もちろんそれはクッキーを差し入れする為。 ハッカチョ族は意外と甘党らしくて、鳥の子なのにケーキも餡子も大好きなんだって(ま、私も芋饅頭が大好きだけど)。
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