第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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彰司の話は私の胸をこれでもかと揺さぶった。 ____あのね、 話と言うのは岡村さんの事なんだ。 彼は今、大ちゃんがいない中、1人で現場を回ってる。 岡村さんは新人だから、依頼の中でも軽めの現場に行けるように、平ちゃんが調整していたらしいんだけど……今回、どうしても霊媒師(ひと)が足らずに重たい現場を任さざるを得なくなったんだって。 そこの現場は悪霊だらけで狂暴化もしているらしく、理想としては中堅あたりが行くのが1番、間違っても新人1人で行く所ではない。 だからと言ってヘルプに回せる霊媒師(ひと)もいないし、岡村さん(本人)は ”ダイジョブだから” と結局ソロで向かってしまったんだ。 確かにね、彼はただの新人ではない。 ”希少の子” だから持ってる霊力(ちから)は誰よりも強いし、霊的なスタミナも桁外れだ。 ただ、心配なのは霊力(ちから)があっても技術は未熟、それになにより人が好過ぎるでしょ。 悪霊にまんまと騙され出し抜かれる可能性がある、出来る事なら大ちゃんが傍に憑いててくれたらなって思ったの。 平ちゃんもね、岡村さんに言ったんだ。 ”大福ちゃんに戻ってきてもらいましょう” って。 だがそれを岡村さんが拒否してね。 ”姫は今頃、お姉さまと幸せな時間を過ごしてるんだ。だから絶対呼び戻さないよ。姫の意思で戻って来るまで僕は待つ。それと、大福に心配かけたくないからさ、このコトは内緒にしといてくださいよ”、そう言ったそうだ。 私はね、この件で平ちゃんから相談を受けたんだよ。 彼の気持ちを考えたら、尊重したら、言われた通りに内緒にすべきと思うけど……内緒にしといて万が一岡村さんになにかあったら、きっと大ちゃんは自分を責めてしまうんじゃないかって思ったの。 それで……私も平ちゃんも悩みに悩んで、岡村さんには悪いけど、大ちゃんには現世の状況を話しておこうと決めたんだ。 聞いた上で、大ちゃんがどう判断するのかは任せるよ。 どちらにしても心配はしなくていい。 イザとなったら私が現世に行ってくるから。 ごめんね……こんな時にこんな話をしてしまった。 大ちゃんの事だ、本当は今すぐにでも現世に飛んで行きたいと思っているんだろう? でも、行くとなったらお姉さまに事情を説明して、尚且つ、彼女と離れて現世に行くのを納得してもらわなくてはならない。 だけどそれが難しい。 おそらくは、…………この先ずっと、黄泉(ここ)で一緒に二度と離れず暮らせると、心の底から信じているだろうから。 …… ………… ……………… まったくもって……彰司の言う通りだ。 お姉ちゃんは信じてる。 もう二度と離れ離れにならないのだと、黄泉の国で千年経っても一緒にいると、そう信じて疑わないの。 私は一体、…………なんと言えばいいのだろう。
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