第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

65/80
前へ
/372ページ
次へ
お姉ちゃんは唇をワナワナ震わせ私を視てる。 なにかを言いかけ、だけどそれは声にならずに空気だけがもれるんだ。 私達は目と目を合せてしばらく黙っていたけれど、ここで、お姉ちゃんが鼻の頭を真っ赤にしながらこう言ったのよ。 『…………き、……ゆき……”行かなくちゃ” って……ど、どこに行くの? どっかに、……い、行っちゃうの?』 胸が……抉られるようだった。 途中で何度もつっかえながら、不安な顔して瞬きひとつで涙が落ちた。 ごめんね、悲しませて。 ごめんね、そんな顔をさせてしまって。 本当にごめんね。 『うな……お姉ちゃん、私……私ね、現世に戻らなくちゃいけないの、』 『……現世に……? ど、どうして? だって、小雪はもう命が終わって、……だから黄泉にいるんでしょう?』 『……そうなんだけど、でもね、』 私は一旦言葉を止めて、お姉ちゃんの真っ赤な鼻をザリリと舐めた。 そしてその後、お姉ちゃんと離れ離れになってる間に起こった事の、すべてを話して聞かせたの。 お姉ちゃんを責める訳では決してないと前置きしてから、虹の国の規則によって、数か月前、イチニャンきりで現世送りになった事。 着いた現世で途方に暮れていた所、霊力(ちから)を持ってる1人の生者に救われた事。 それ以来、生者の家で一緒に暮らし、寝食を共にしてる事。 また、その生者が霊媒師である事と、微力ながらも生者の仕事の手伝いをしてる事。 それらを話し、最後に1番大事な事を口にした。 『英海(ひでみ)は……うな、その生者は今、大変な仕事を1人で抱えている。私の助けが必要なのよ。だから、だから、行かなくちゃいけないの、ううん、行ってあげたいの、』 言い終えて顔を視れば、お姉ちゃんはボロボロに泣いていた。 後から後から涙が溢れて止まらなくって、嗚咽に言葉を詰まらせている。 それでもどうにか、絞るように出した言葉は後悔と悲しみにまみれていた。 『……こ……こゆ……小雪、……そうだったんだ……ごめん……お、お姉ちゃんが小雪を忘れたばっかりに、悲しい思いをたくさんさせた、……な、何十年も虹で待っててくれたのに、お姉ちゃんのせいでイチニャンぽっちで現世に行かされたんだ……ど、どんなに心細かっただろうね、どんなに悲しかっただろうね、……か、家族失格だよ……こ、小雪が辛い時、た、助けてくれたのは、お姉ちゃんじゃない、そ、その人だったんだ……そんな事も知らないで呑気にしてて……情けない……自分が嫌になる……そうだよね、こんなお姉ちゃんより、その人の所に行きたいよね、当たり前だよ……本当にごめん』 ああ……待って、違うの、そうじゃないの。 どっちが好きとかじゃないの。 ★こんばんは、たまこです。 いつも『霊媒師こぼれ話』を読んでいただいてありがとうございます✨ 今夜は皆さまにお知らせがあり割り込ませていただきました。 今回の『大福編』なのですが、思ったより長くなってしまい毎度の事ながら申し訳ありません💦 あと少しで完結なのですが、このまま週2の更新だとしばらく終われそうにないので『大福編』に限り、明日から完結まで毎日更新とさせていただきます。 皆さまにはご無理のない範囲でお付き合いいただければ嬉しいです。 どうぞよろしくお願いします(*´ω`)
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加