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明るい陽射しとそよぐ風、……お姉ちゃんに抱きしめられた肩の向こうでハッカチョ族が泣いていた。
そのうち一羽と目が合うと、カチカチ小さな音を鳴らしてクチバシを開いたの。
『……ね、ねぇ、今の話で大体事情は分かったわ。小雪……辛かったわね、大変だったわね。ピョ……優子も、今が辛いわよね。あのね、私も思うのよ。今回の事は誰も悪くないわ。優子を視てれば、小雪の事を忘れたくて忘れたんじゃないのが分かる。小雪だって、優子の事が嫌になったから現世に帰るんじゃない、……もっと別な理由があるのも分かる。……優子だって、本当はそういうのぜんぶ分かってるのよね。ただ、感情がついてこないんだピョ……』
そこまで話すとお腹の前で、羽を重ねてうなだれた。
お姉ちゃんは変わらず私を抱きしめたまま動かない。
英海よりも細い腕が震えてる。
それがどうにも頼りなくって、なんとも言えない気持ちになった。
私は……どうしたらいいんだろう。
この自問も数度目だ。
何度も自分に問いかけたのに、ちっとも答えが視つからない。
英海の事が心配だけど、こんなに泣いてるお姉ちゃんを振り切るなんて出来ないよ。
『……お姉ちゃん、』
声をかければ ”うぅ” と短く、呻く声がかすかに聞こえた。
気を抜けば聞き逃してしまいそう、それくらい小さな声だ。
私はそれをもっとちゃんと聞きたくて、霊体を捩り、自分の耳をお姉ちゃんの口元に近づけた。
『こ、小雪……ごめんね。お、お姉ちゃん、小雪を困らせてるね、……あ、あのね、だ、だいじょうぶだよ、』
浅い息と掠れた声……それでもここなら良く聞こえる。
『ハ、ハッカチョちゃんの、い、言う通りだって、本当は、わ、分かってる。そ、それと、現世の……生者の方、英海さん……だったよね? 英海さんにも感謝してる、こ、小雪を助けてくれた方だもの。私が出来なかった事を代わりに……ううん、元はと言えば私のせいだ。私が小雪を忘れなければ良かったのにね……こんなお姉ちゃんじゃあ、小雪を引き留める資格もないのに……わがまま言ってごめんね。お姉ちゃん小雪に甘えてばっかりだ。も、もう平気だよ、心配しないで、……お姉ちゃん、もう小雪を縛ったりしないよ、』
ボロボロに泣くお姉ちゃんは ”小雪を縛らない”、そう言ってゆっくりと腕を緩めた。
私をそっと地面に置くと、もう一度 ”ごめんね” と呟いてから無理な笑顔を作ったの。
拭っても拭っても間に合わないほど涙を溢して、私の頭を優しく撫でて、一生懸命笑っていた。
私は、私は……そんなお姉ちゃんを視て、胸が張り裂けそうになったんだ。
同時、英海の顔が頭に浮かんだ。
____姫、お姫、僕の宝物、
____大福大好き、ずーーーーっと一緒にいようね、
英海……私もアナタが大好きよ。
私の英海、……私にとっても宝物だわ。
だけど……お姉ちゃんが泣いている。
お姉ちゃんは悪くないのに、私を忘れた負い目に苦しみ、泣いているのに無理して笑うの。
私……こんなお姉ちゃんを放っておけないよ。
『…………ねぇ、泣かないで、無理に笑わないで、……お姉ちゃん、ごめんね、大丈夫だよ。私、どこにも行かないわ。黄泉にいる。お姉ちゃんの傍にいるから、』
思わず口をついていた。
英海の事が心配なのに、今すぐにでも飛んで行きたいのに、なのに、……それなのに、……英海、ごめんね。
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