第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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____お姉ちゃんの傍にいる、 私が言うと、お姉ちゃんはますます泣いてしまったの。 ”ごめんなさい” と何度も言って、ああ……それ以上あやまらないで。 ねぇ、お願いだから泣き止んで。 どうにか涙を止めてほしくて、私は何度も頭突きをした。 ゴッチンゴッチン頭を擦りつけ、濡れてる頬もザリザリ舐めた。 お姉ちゃんは私の霊体(からだ)を両手で撫でつけ 、口元を僅かに動かしなにかを言った。 今、なんて言ったの? 声が小さくて聞こえなかった。 聞いてみようと思ったけれど、でも、それはひとまず後回しにした。 その前に色々と話しておきたい事がある、お願いしたい事もある。 『お姉ちゃん、もう泣かないで、心配しないで。私、これからも黄泉にいる。お姉ちゃんと、お母さんとお父さんと、ハムの小雪と一緒に暮らす、』 ザリンと鼻を一舐めすると、変わらず涙は溢れているけど嗚咽だけは止まってくれた。 少し……落ち着いたのかな。 『それでね、……うな、その前にね、話しておきたい事があるんだ。……お姉ちゃん、気づいてる? 私の尻尾、今は3本あるでしょう?』 言いながら三尾を振った。 気づいていない訳がないけど、まずはここから話を始めた。 『う、うん。気づいてたよ。猫又になったんだなぁって思ってた。黄泉に来てから、小雪じゃないヨソの猫ちゃんでもそういう子がたくさんいたから、その子達と同じなんだなぁって。黄泉に来た最初の頃はビックリしたけど、今はもう視慣れてる』 そうよね、黄泉(こっち)の世界は猫に限らず、犬の子だってタヌの子だって、複又(ふくまた)がたくさんいるもの。 『あのね、尻尾が増えるとね、色んな事が出来るようになるの』 『色んな事?』 『うな、色んな事よ。たとえば、こうやってヒトの言葉を話したりもそうよ』 『ヒトの言葉……ん、でもそれは、黄泉の国の翻訳システムがあるからでしょう? だって、ハッカチョ族のみんなの言葉も分かるわ』 『そうね、それもあるけど、私の場合は翻訳無しでも話せるの。それは尻尾が増えたからよ』 『そうなんだ……すごいんだね……』 あ……引いたかしら……気持ちが悪いと思われたかしら……でも、ちゃんと最後まで話さなくちゃ。 『出来る事は他にもたくさん、……そのうちの1つにね、惑星単位の瞬k……いえ、黄泉と現世を私の意思で、自由に行き来が出来るというのがあるの。だから、今回黄泉に来たのだって、誰かに口寄せされたんじゃなく、その霊力(ちから)を使って来たのよ、』 ここまで話すと後ろで聞いてたハッカチョ族が、声を大に割り込んだ。 『ピョー!? 小雪ったらそんな事が出来るの!? すごいじゃない! だったら悩まなくて良いわね! 黄泉と現世、行ったり来たりすれば良いのよ! ウピャー!』 うな、理屈の上なら鳥の子の言う通り。 だけど……そこに感情が加わると、すんなりいかない事もある。
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