第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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ハッカチョ族の大きな声。 お姉ちゃんは細く息を吐き出してからこう言った。 『……小雪はすごいね、そんな事まで出来るんだ。じゃあ、……じゃあ、小雪はこれからも黄泉(こっち)で暮らして、たまに現世に行って英海(ひでみ)さんに会ってくる……というのでも良いのかな。……お姉ちゃん、わがままかな、英海(ひでみ)さん、悲しむかな……でも、でも、出来ればそうしてほしい、…………だって、だって……本当は、もう離れたくない、……仔猫の頃から一緒にいて、大事な大事な猫なんだもの……私が忘れたりしなければ良かったのに……忘れちゃって、でもこうしてまた会えた。嬉しかった、奇跡だと思ってる。だから傍にいてほしい、現世にはたまに戻って、ああ……チガウ……お姉ちゃん、本当の本当は小雪の事、英海(ひでみ)さんに返したくないよ……! 小雪は私の大事な子だもの……! あぁ……私、なに言ってんだろ……酷いね、勝手だね、……でも、それが本心なんだ……ごめんね』 …………ううん、ううん、 酷いけど酷くない、気持ちは分かるんだ。 私だって思ったよ。 虹に、お姉ちゃんが来た日。 私の事は忘れてしまって、目の前を通り過ぎてハムの小雪を抱き上げた時の絶望感。 今でもはっきり覚えてる。 なんとか自分を納得させて前を視たけど、でも、でもね、心のうんと奥底で、少しだけ思ってしまった。 ____どうしてハムなの? ____どうして私じゃないの? って。 あのまま英海(ひでみ)と出会わなければ、きっと……いいえ、確実に気持ちはもっと悪い方へ堕ちたと思う。 そう……考えるのも悍ましいけど、”ハムなんていなければ良かった” と。 お姉ちゃんにはそうなってほしくない。 大好きなお姉ちゃんが、大好きな英海(ひでみ)に対して、”英海(ひでみ)さんなんていなければ良かった” などと、思ってほしくないの。 英海(ひでみ)がね、よく言うのよ。 ____人ってさ、弱い生き物だよ、 ____自分が思うほど、こうありたいと願うほど強くないんだ、 その通りだと思う。 人も、猫も、時として心の弱さに呑まれてしまう。 だから私はお姉ちゃんの傍にいる。 お姉ちゃんが納得して、私を笑って現世に送り出してくれるまで。 でも1つだけ、どうしても聞いてほしいお願いがあるの。 『酷くないよ、勝手じゃないよ。私はお姉ちゃんが大好きだもの、こんな事でキライになんかならない。傍にいる、黄泉にいるから安心して、……でもね、その前にお願いがあるんだ。必ず黄泉(ここ)に帰ってくるから、1度現世に行かせてほしい。英海(ひでみ)は今、仕事場でたった1人で頑張ってるから助けに行きたいの。助けたら絶対に帰ってくる、約束するから』
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